【改正あり】小規模宅地の「家なき子特例」の内容。利用条件を把握して最大限節税しよう!

投稿日
2020年01月28日
更新日
2020年01月28日
estate-valuation

電卓と家

「親と同居していなかったけど、小規模宅地の特例を使う事はできるの?」

「家なき子特例って言葉を聞いたことがあるけど、一体どういう制度なの?」

税理士法人ファンウォール、代表税理士の山中です。分かりやすい解説になるように頑張ります!

相続した土地の評価額を最大で80%も評価減することができる、小規模宅地等の特例。相続税への影響が大きいので、是非とも活用したい特例ですね。

しかし、小規模宅地の特例はどんな土地でも評価を減額出来るという訳ではなく、基本的には配偶者もしくは被相続人と一緒に住んでいた相続人が土地を相続することが必要です。

参考:他にも被相続人が事業用に使っていた宅地や賃貸に出していた宅地なども適用が可能ですが、この記事では特定居住用宅地に限定しています。

「あぁうちは要件を満たしていないから特例は使えないか・・・。」

と思った方に朗報です!

相続した土地に被相続人と相続人が一緒に住んでいなかったとしても、小規模宅地の特例が受けられるケースがありますよ。

それが家なき子特例です!

知っておかないと8割もの評価減を使わずに申告してしまう事になりかねません。

それは非常にもったいないことなので、この記事で「家なき子特例」の内容や要件などについて、理解しておきましょう!

ポイントは以下の通り。

  • 家なき子特例を使うと、土地の評価が最大80%減らせる!
  • 平成30年度税制改正で要件が厳しくなった!
  • 被相続人と同居していない持ち家のない相続人が適用対象

では、家なき子特例について一緒に見ていきましょう。

なお、小規模宅地等の特例の全体像を知りたい方は下記記事を御覧くださいね。

小規模宅地等の特例とは?自宅の評価が8割減できる制度の総まとめ【記事未了】

家なき子特例とは?~評価減の計算例もあり~

住宅のイメージ

家なき子特例は、簡単にいうと以下のような制度です。

「亡くなった人に配偶者や同居していた相続人がおらず、被相続人が居住用に使っていた不動産を相続した人が、過去に自分の持ち家に住んだことがない場合、特別に小規模宅地の特例を適用してもいいですよ。」

前述のように、基本的に小規模宅地の特例は「相続人が被相続人と同居」していた場合に利用可能な評価減の制度です。

しかし、仕事の都合などで親等と同居ができない相続人に対して「同居していないのだったら特例は使えません」と一律に否定をするのは厳しすぎますよね。

そこで、家なき子特例によって一定の救済措置を設けたのです。

家なき子特例を使うと、適用対象の土地の評価額が最大で80%減額(330㎡が限度)されます。従って、うまく活用すれば大幅な相続税の節税が可能ということになりますね。

家なき子特例を使った評価減の計算例

土地の評価額:5,000万円
土地の面積:400㎡

評価減の金額:5,000万円÷400㎡×330㎡×80%=3,300万円
実際評価額:5,000万円-3,300万円=1,700万円

つまり、5,000万円の土地が3,300万円評価減され、1,700万円になるということです。

家なき子特例は税理士の業界で使われているいわば業界用語なので、条文や通達などを見てもそういった単語はでてこないです。また、家なき子は「家なし親族」と呼ばれることもあります。

小規模宅地の特例の「家なき子特例」を使うための要件6つ

チェックリスト

家なき子特例の主な適用要件は以下の6つです(参考:租税特別措置法69条の4第3項2号ロ小規模宅地等の特例|国税庁

いずれか1つ満たせば良いというのではなく、6つ全部満たさなければいけません。

  1. 被相続人に配偶者がいないこと
  2. 被相続人が一人暮らしだった
  3. 相続開始前3年以内に3親等以内の親族や特別な関係にある法人の持つ家に住んだことがない
  4. 家なき子特例を適用する土地を取得した相続人が、相続開始の時に居住している家屋を一度も所有したことがない
  5. 相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を所有している
  6. 制限納税義務者のうち日本国籍を有している者
全ての場合に当てはまるわけではないですが、基本的には「相続開始前3年間を賃貸住宅で暮らしていた別居の親族が適用できる」と考えておくと良いですね。
参考:平成30年度の税制改正により、平成30年4月1日以降に発生した相続等については家なき子特例の要件が一部変わり、従来と比べると要件が厳しくなっています。改正情報の詳細は後述しています。

以下で具体的な要件について見ていきましょう。

①被相続人に配偶者がいないこと

まず大前提として「家なき子の特例」が使えるのは被相続人に配偶者がいない場合です。

配偶者がいない状況というのは、「配偶者がすでに亡くなっている・離婚している・一度も結婚していない(未婚の母とかetc)」のいずれかですね。

そもそも、配偶者がいるのであれば、その宅地を配偶者が取得すれば、基本的に無条件で小規模宅地等の特例を使えますから、「家なき子特例」の適用を認める必要がありません。

家なき子特例は何らかの事情で被相続人と同居できていなかった相続人を救済するための措置ですから、配偶者がいるのであれば、そもそも救済措置なんて必要ないでしょう、という事ですね。

②被相続人が一人暮らしだった

古い家屋

被相続人に配偶者や同居の親族がいる場合、その配偶者や同居の親族は、「家なき子特例」を使わずとも、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

従って、あえて同居していない親族を保護する必要はないので、家なき子特例は使えません。

参考:「一人暮らしだった」と書いていますが、相続人ではない人と同居している分については問題ないですよ。

なお、配偶者や同居親族がいる場合は家なき子特例を使うことはできないですが、仮に配偶者や同居親族が相続放棄をしたとしても、家なき子特例が使えるようにはなりません。

これは、相続放棄をしても法定相続人等の考え方については「放棄がなかったものとした場合の相続人」とするからです。

③相続開始前3年以内に3親等以内の親族や特別な関係にある法人の持つ家に住んだことがない

提案する女性

相続開始前3年以内に、以下の人や法人が所有している家に住んだことのある相続人は、家なき子特例を使うことができません。なお、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋は除きます。

  • 自分
  • 自分の配偶者
  • 自分の3親等内の親族
  • 自分と特別な関係がある法人

:特別な関係というのは、主に被相続人やその親族が50%超の株式を所有している法人を指します(租税特別措置法施行令第40条の2第15項)。

従って、「相続人である娘が自宅を相続することになったが、自分は夫の持ち家に住んでいる。」といった場合は、条件を満たさないので特例の適用を受けることはできません。

あくまでも持ち家があるかどうかの判定は3親等以内の親族で行うこととされているからですね。

賃貸マンション・アパート、社宅、寮などに住んでいれば基本的にOKということですね。ただし、大家さんが親戚の場合は注意が必要ですよ。

なお、投資用の不動産を持っている方も増えてきていますが、投資用の不動産を所有していても、そこに住んだ事が無い場合は、家なき子特例の適用には影響ありません。

あくまでも自分や特別の関係にある人の所有している家に「住んでいないこと」が必要なのです。

④家なき子特例を適用する土地を取得した相続人が、相続開始の時に居住している家屋を一度も所有したことがない

権利証と印鑑

家なき子特例を適用する土地を取得した相続人が、相続開始の時に居住している家屋を過去に一度でも所有していたことがある場合、家なき子特例は使うことができません。

これは、改正によって追加された項目です。

以前は

・自分が持っていた家を親に買い取らせて、自分は家なき子となって小規模宅地等の特例を適用する
・自分が持っていた家を自分の子供(被相続人からすると孫)に贈与して、自分は家なき子となって小規模宅地等の特例を適用する

という節税手法が適用可能でした。

しかし、本来家を持っていたわけですから、そんな方法で小規模宅地等の特例を使うのは、「家なき子特例の趣旨」に反しているでしょう!という事で、要件に加えられたのですね。

⑤相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有している

家なき子特例は、被相続人と同居していない親族が、将来的にその居住用不動産に住むことを期待して評価減を認めるものです。

従って、少なくとも相続税の申告期限まではその宅地を所有しておく必要があります。申告期限までにその宅地を売却してしまった場合は、家なき子特例を使うことは出来ません。

申告期限までに実際に住み始める必要はないですよ。また、当面住む予定がないのであれば、相続した不動産を賃貸に出してもOKです。

なお、あくまでも申告期限まで所有していることが求められているので、申告期限が過ぎたらすぐに売却したとしても要件自体は満たしています。ただし、特例を受けるためだけに売却の時期をずらすというのは、オススメしません。

⑥制限納税義務者のうち日本国籍を有している者

以下のような方は制限納税義務者となり、基本的に海外にある相続財産に対しては相続税が課税されません。

  • 一時的に日本にきている外国人
  • 被相続人と相続人が海外に移住して10年以上経過している

そして、これらの制限納税義務者のうち日本国籍をもっていない人は、他の家なき子特例の要件を満たしていても家なき子特例の適用を受けることはできないです。

制限納税義務者という言葉は難しいですが、日本に住んでいる一般的な日本国籍の方は、この要件については特に気にする必要はないですよ。

なお、相続したのが被相続人の養子だったとしても他の要件を満たしていれば、問題なく家なき子特例を適用することが可能ですよ。

【参考】平成30年度の税制改正で何が変わった?

疑問に思う女性

税制改正により適用要件の厳しくなった家なき子特例ですが、実際のところ何が変わったのでしょうか。

まずは改正前の家なき子特例の要件を載せておきますね。

①被相続人の配偶者や被相続人と同居していた相続人がいない
②相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有に係る家屋に居住したことがない
③相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有している
④制限納税義務者のうち日本国籍を有している者

改正前の要件と上で紹介した現在の要件とを見比べてみると、大きな改正は以下の2点が追加されたことですね。

平成30年改正により追加された事項

  • 相続開始前3年以内に3親等以内の親族や特別な関係にある法人の持つ家に住んだことがない←3親等内の親族と法人が追加。
  • 相続開始の時に、取得者が居住している家屋を一度も所有したことがない

(参照元:平成30年度税制改正の解説-財務省

なぜこのような厳格化が行われたかというと、制度の趣旨から逸脱した特例の利用者が目立ったからです。

もともとこの特例は、仕事の都合などによって被相続人と同居ができず、持ち家もない相続人が、被相続人の亡くなったあとで被相続人の住んでいた家に戻ってくることを想定しています。

しかし最近は、自分の名義の家があるにも関わらず、その名義を自分や配偶者以外の人に変更して住み続けることで、持ち家がない状況を作り出して特例の適用を受ける人が多かったのです。

税金と豚の貯金箱

また、自分で家を所有していない孫に対して遺贈をして、特例の適用を受けようとするケースも多かったと言われています。これらはいずれも本来の制度趣旨とは異なる特例の使い方ですよね。

そこで、平成30年度の税制改正によって利用を制限しようとした、という訳ですね。

この改正によって、従来は適用可能だった以下のケースについて家なき子特例の適用ができなくなりました。

  • 親の使っていない持ち家にタダで住ませてもらっていたケース
  • 相続人の持ち家を他人や親族に売却し、その家をリースバックして住んでいるケース
  • 相続人である子と同居している孫に遺贈するケース(居住する家屋は子が所有している)
  • 相続人である子が所有・居住している家屋を、同族会社などに売却したり自分の子に贈与するなどして、3年経過するのを待つケース

なお、以下のようなケースについては、改正前後を問わず相続人(受遺者)は要件を満たしているので特例の適用が可能です。

  • 相続人である子が持ち家に居住している場合に、子と別居して3年経過する孫に遺贈するケース
  • 相続人である子が所有・居住している家を、売却するか第三者に賃貸をして、賃貸物件に居住して、3年が経過するのを待つケース

参考:孫(代襲相続を除く)や甥姪が相続をすると、相続税額が2割加算となることを忘れずに!

親に買ってもらった家(親名義)に住んでいる人についても、家なき子特例の適用対象外となりますね。実質的に、作為的な節税対策は出来なくなったと言えるでしょう。

【重要】平成30年度税制改正には経過措置がある!

税金とお金

上で紹介した改正後の要件は、平成30年4月1日以降の相続等に適用されるのですが、「そんなこと急に言われても・・・」という方々のために経過措置が用意されています。

具体的には、平成30年4月1日から令和2年3月31日までの間に相続や遺贈により取得する財産のうち、平成30年3月31日までにこの相続等があったものとした場合に、改正前の要件に該当することとなる宅地等(経過措置対象宅地等)については、改正後の要件を満たしているものとして特例の適用が可能です(平成30年度税制改正法附則118②)

つまり、改正後に発生した相続でも、令和2年3月31日までという経過措置期間までに相続等で取得したものであれば平成30年3月31日時点(及び相続開始時点)で改正前の家なき子特例の要件を満たしているのであれば、特例を適用しても良いですよ、ということですね。

また、令和2年4月1日以降に相続等で取得する財産の中に経過措置対象宅地等がある場合、以下の要件を満たすのであれば、改正後の要件を満たしているものとして特例の適用が可能となります(平成30年度税制改正法附則118③)

  • 令和2年3月31日時点で、当該宅地等の上にある建物の新築・増築その他の工事が行われている。
  • 当該工事の完了()前に相続等が発生した。
  • 当該相続等の申告期限までに取得者が住み始めた。

:工事の請負人から建物等の引き渡しを受けたことを意味します(措通69の4-22の2注2

小規模宅地等の特例(家なき子)の適用を受ける際の添付書類

住民票

家なき子特例を受ける際に、申告書以外に必要となる添付書類は以下の通り。

  • 相続開始前3年以内の住所を明らかにする書類 ※1
  • 相続開始前3年以内に住んでいた自宅が、自分又は自分の配偶者、三親等内の親族、特別の関係のある法人の所有物件ではないことを明らかにする書類 ※2
  • 相続開始の時において自己の居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことを明らかにする書類 ※2
※1:住民票や戸籍の附票の写しなど。ただし、特例の適用を受ける相続人にマイナンバーがある場合は提出は不要。

※2:賃貸マンションやアパートの場合は、賃貸契約書のコピーや登記簿謄本などでOK

特例を受けたいけど、申告期限の時点で遺産分割協議が終わっていない場合、「申告期限後3年以内の遺産分割協議の分割見込書」の提出が必要です。

小規模宅地等の特例(家なき子)の適用を受ける際の申告書の記載方法

相続税の申告書

家なき子特例の適用を受ける場合の相続税申告書の記載方法についてですが、配偶者や同居親族が小規模宅地等の特例を受ける場合の記載方法と特に違い有りません。

必要となる申告書は以下の通り(全てが必要となるわけでは有りません。最低限必要となるのは付表1です)。

  • 第11・11の2表の付表1
  • 第11・11の2表の付表2の1
  • 第11・11の2表の付表2の2
  • 第11・11の2表の付表2の3

記載方法については、「小規模宅地等の特例とは?自宅の評価が8割減で大幅節税だが、落とし穴に要注意。【記事未了】」を参考にしてください。

まとめ

小規模宅地等の特例(家なき子特例)について見てきました。

家なき子特例は、被相続人と同居していない親族のために設けられた制度です。

小規模宅地等の特例は、「配偶者か同居親族のためだけのもの」と誤解している方も多いようなので、同居していない親族でも適用できる可能性があるという点はしっかりと覚えておきましょう。

最大で80%も評価減となりますからね。受けられたはずなのに、制度の存在を知らずに適用し損ねた、という事にならないようにしましょう。

ただし、要件は複雑な箇所もあるので、少しでも不安に感じた場合は税理士や税務署に相談することをオススメします。

なお、家なき子特例を受けることができる相続人がいたとしても、その自宅をどうしたいのかを最優先に考えて遺産分割をするようにしてくださいね。税額が安くても揉めたりしては意味が無いですからね。

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