【忘れると危険】相続放棄の期限は3ヶ月。それ以上に延ばす方法と期限が過ぎてしまった時の対処法

投稿日
2019年09月05日
更新日
2019年09月06日
basis

期限はたったの3ヶ月

相続放棄が出来る期限は「相続開始後3ヶ月以内」と限られています。

家族が亡くなって傷もまだ完全には癒えてない状態で、相続手続きをしなければならないのですからたまったものでは有りません。

しかし、期限が決められている限り、相続放棄するか否かの判断をしなければなりません。

こんにちは、相続税申告を専門にしている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

父親などの家族が亡くなると、その方が生前に持っていた財産を遺された家族が相続することになります。しかし、財産には不動産や預金などのようなプラスの財産もあれば、借金のようなマイナスの財産もありますよね。

マイナスの財産が多い場合、たとえそれが家族の遺したものだったとしても、引き継ぎたくないでしょう。自分のその後の人生が借金まみれになってしまいますからね・・・。

そこで、マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合は、相続放棄といって家庭裁判所に

「私は亡くなった家族の財産(プラスの財産もマイナスの財産も)は一切相続しません!」

と申し出ることで、借金を引き継がない事が出来るのです。

ただし、この相続放棄はいつでも出来るのではなく、手続きの期限があります。

今回はその期限についてみなさんに分かりやすく解説していきますね。
かりに既に3ヶ月を経過していたとしても、場合によっては期限を延長できる場合もあります。そのようなケースについても解説していますので、ぜひ最後まで御覧くださいね。

相続放棄の期限に関する主なポイントは、以下の4つ!

  • 相続放棄には、相続発生後3ヶ月以内という期限がある!
  • 3ヶ月のカウントがスタートするタイミングは人によって異なる!
  • 相続放棄の期限を3ヶ月以上に延ばす方法もある!
  • 期限が過ぎてしまうと、原則相続放棄は不可能!

では、一緒に見ていきましょう。

相続放棄は期限が重要です。家族が亡くなってしばらくは、葬式や挨拶回りなどしなければならない事もあるし、他に何もする気にならないかもしれないですが、相続放棄の手続きを忘れると後で大変な事になりますよ!

相続放棄の期限は原則3ヶ月!

カレンダーとスケジュール

家庭裁判所で手続きをすれば相続放棄ができるのですが、いつでも出来るという訳ではありません。

民法では、相続放棄は「自己のために相続があったことを知ったときから3ヶ月以内」にしなければならないと決まっています民法第915条1項)

なお、この3ヶ月の事を「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼びますよ。

参考までに、条文を載せておきますね。

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

補足:相続の仕方には、単純承認・相続放棄の他に限定承認というものがあります。限定承認は、一般的に借金が多いのか少ないのか分からないような場合に採用される方法です。詳しくは「限定承認なら相続時の思わぬ金銭的損失を回避可能!利用手続きの流れや活用方法を解説」を参考にしてください。

重要なのは、被相続人(=亡くなった人)が「死亡した日」ではなく、相続人が「知ったとき」という点ですね。

「自己のために相続があったことを知ったときから」というのは、基本的に、以下の2つの条件を満たした日からカウントがスタートする、という意味です。

  • ①相続が開始した事を知った(父が亡くなったなど)
  • ②それにより自分が相続人になった事を知った
  • (参考:大決大正15年8月3日より)

この熟慮期間である3ヶ月を過ぎてしまうと、単純承認をした(=財産を全て相続をする事に決めた)という扱いになり、相続放棄をすることは原則できません。

 
極端な例を出してみると、父が生前に5億円もの借金を抱えていて、めぼしい資産は全くなかったというケース。通常であれば、相続放棄しますよね。手元に残るのは借金だけなのですから。

しかし、3ヶ月間の熟慮期間の間に相続放棄の手続きを怠ってしまうと、5億円の借金全額をあなたが相続しなければなりません。あなたが本当は相続放棄したかったとしてもです。

熟慮期間中に手続きをしないと単純承認になる!

相続放棄

親に多額の借金があって、相続放棄をする事になると最初から分かっている人は良いですが、親が亡くなって初めて財産を調べた人の場合は、3ヶ月という短い期間で相続放棄をするかどうか結論を出さなければなりません。

借金が多いのに相続をしてしまうと、最悪の場合、自己破産をしなければならなくなる事もあります。特に親が幅広く事業をしていた場合などは、知らないところで借金があったり、連帯保証人になっていたりするケースもあるので注意が必要ですね。

なお、一般的に亡くなった方が遺言を残してくれている場合は、相続放棄をする必要は無いケースが多いようです。

ただし、絶対とは言えないので、遺言があった場合でも負債の有無は確かめた方が良いでしょう。

葬式のタイミングでこういう話をする余裕はないでしょうから、四十九日の法要を目処に家族で話し合いをするようにしましょう。

最近は四十九日の法要までを省略するケースが多いので、その場合は別途話し合いの場を設けましょう

相続放棄の期限である3ヶ月のカウントが始まるタイミング(起算日)は人によって違う!

相続放棄の期限は、相続があった事を知ってから3ヶ月と書きましたが、この3ヶ月のカウントがスタートするタイミングは実は人によって異なります。

具体的には、「①被相続人の配偶者や子」「②子が未成年者の場合」「③自分よりも先の順位の方が相続放棄した事により相続人になった方」について以下のように分けられます。

熟慮期間のカウントスタート時点

①被相続人の配偶者や子の場合(一般的なケース)

一般的に、人が死ぬのは自宅や病院等のケースが多いです。
そして、家族の誰か、特に被相続人の配偶者や子供がその死に立ち会うことが多いでしょう。

従って、被相続人の配偶者や子が相続人の場合には、死亡した日がそのまま死亡の事実を知った時になることが多いです。

しかし、親が一人暮らしをしていたようなケースでは、死亡したことを知るのに時間がかかるケースもあります。

そのような場合は、亡くなった日ではなく「亡くなったことを知った日からカウントがスタートする」、ことになります。

例えば、自宅で一人暮らしをしていたAさんが2017年8月15日に亡くなったとしましょう。そして、Aさんの長男であるBさんは2018年4月10日にAさんが亡くなった事を知りました。

熟慮期間は死亡を知った日にスタートする

この場合、Aさんが相続放棄をする期限は2017年11月15日ではなく、2018年7月10日です。Aさんが亡くなった事を知らない期間中はBさんは相続放棄のしようがないですからね。

②相続人に未成年がいる場合

次に、未成年者は重要な法律行為をすることは出来ないので、親権者が代わりに行う事になります民法第5条

相続放棄は重要な法律行為なので、未成年者が自分の意思だけでする事は出来ません。

従って、代わりに法律行為を行う親権者が相続の発生を知ったときにカウントがスタートすることになります。

と言っても、通常は親権者は親なので、①と同様に死亡の日がそのままカウントスタートのタイミングとなるでしょうね。

③先順位者が相続放棄したことに伴い相続人になるケース

相続放棄

最後に、相続放棄により新たに相続人になった人ですが、これは少し難しい&知らないと損害を被る可能性があるので重要です。

相続には以下のように順番が決められており、遺言が無い場合、通常はこの順位に従って相続をする事になります(配偶者に順位はなく、常に相続人です)。

  • 第1順位・・・直系卑属(子・孫・ひ孫)
  • 第2順位・・・直系尊属(父母・祖父母)
  • 第3順位・・・兄弟姉妹・甥姪
法定相続人や相続の順位については「【図解で簡単】法定相続人の範囲と順位、遺産割合を法定相続人別(子ども・父母・兄弟姉妹など)に解説【記事未了】」を参考にしてください。

上の順位の方がいる場合は、下の順位の方には相続する権利がありません(遺言で定められている場合は相続可能)。

しかし、上の順位の相続人が「借金ばかりだから相続放棄しよう!」と考えて、相続放棄をした場合、相続をする権利は1つ下の順位の方に移ります。

例えば、祖父・父・母・長男の4人家族で父が亡くなった場合、長男が第1順位です。この長男が相続放棄をしたとしましょう。すると、相続をする権利は祖父に移ります。

第1順位者が相続放棄した時の例

しかし、長男から祖父に相続放棄をした旨の連絡をしないと、祖父は自分が相続人である事を知らないままとなってしまいます。

知らない間に家族が相続放棄をしていて、気づいたら相続放棄の期限が来て多額の借金が自分に降りかかってきた・・・なんて怖いですよね。

そこで、このように上の順位の方が相続放棄をした事によって新たに相続人になった方がいる場合は、「新たに相続人になった方が、自分が相続人となった事を知った時点」からカウントがスタートするようになっています。

【参考】3ヶ月以内に相続放棄の書類を提出すればOK!~

裁判所に出す申立書

相続放棄の申立には、書類の内容確認等が必要なので提出してから手続きが完了するまでに数日~数週間程度かかります。

しかし、相続放棄は3ヶ月以内に手続きが完了していなければならないという訳ではなく、3ヶ月以内に裁判所に相続放棄の書類を提出すればOKです。

期限ギリギリで必要書類がすぐに準備出来ない!という場合は、とりあえず申立書だけでも提出するようにしましょう。

相続放棄の期限は3ヶ月以上に延長する事ができる!?

相続放棄の期限は3ヶ月ですが、亡くなった方の想いの詰まった財産を貰わずに放棄するなんて、そんな簡単に決めることは出来ないですよね。

それに、亡くなった方が自分の配偶者であればまだしも、自分の親の財産や借金がどれくらいあるのかなんて、生前のうちに全て把握している家庭なんてそうそう無いでしょう。

それを改善するために、最近はエンディングノートが流行ったりしてますけどね。

そこで、

  • 相続財産が無いと信じていたが、実は多額の借金があった。
  • 3ヶ月間必死に財産の調査をしたけど、財産合計がプラスなのかマイナスなのかわからず、相続するか放棄するかの結論が出せなかった
  • 相続人が海外在住で、手続きするのが難しい

というような場合は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをすれば、3ヶ月の熟慮期間を1〜3ヶ月程度延長してもらう事ができるようになっています(これを「放棄の期間伸長」と言います)。

参考:延長してもらえる期間は、財産の内容や量、住んでいる場所などによって異なり家庭裁判所の裁量に委ねられています(場合によっては1年以上延長される事もあるようです)。

これは、民法(915条1項但書き)でも以下のようにしっかりと規定されていますよ。

ただし、この期間(←熟慮期間のこと)は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

あくまでも放棄の期間伸長は、例外として認めてもらうものなので、「単に忙しかったから」や「相続放棄の期限が法律で決まってるなんて知らなかった」、という理由はダメですけどね。

それに、家庭裁判所に申立をしたからといって「必ず認められる訳ではない」、という点は忘れずに。

申立をしたから延長されるものだと思い込んでいると、認められずに熟慮期間が過ぎてしまったというケースもあるようなので、余裕をもって延長の申立をするようにしましょうね。

期限の延長効果は、申立をして認められた方だけにしかありません。相続人が複数いて、みんな延長したい場合は、各人で申立をしなければならないので忘れずに!

なお、裁判所に申請する際には以下の書類が必要となります。

  • 申立書(記載例
  • 収入印紙(相続人1人につき800円)
  • 連絡用の切手
  • 添付書類(亡くなった方の住民票除票や、延長してほしい相続人の戸籍謄本等

:相続放棄をする際の必要書類と同じ(関連記事:相続放棄の必要書類【記事未了】)

期限を延長してもらうための手続きは、自分でする事も可能ですが、面倒・よく分からないという方は弁護士さんに相談すると良いでしょう。

参考までに、東日本大震災(平成23年3月11日)の被災者である相続人は、特段の申請をしなくても熟慮期間が平成23年11月30日まで延長されていました。(参照元:特例法により延長された相続放棄等の熟慮期間 | 法務省

相続放棄の期限切れとなってしまった場合の対処法

「相続放棄の期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は出来ません」と上で書きましたが、例外があります。

つまり、熟慮期間を過ぎても相続放棄ができるケースがあるのです!

ひらめく女性

ただし、あくまでも例外なので必ず期限後の相続放棄が認められる、という訳ではありません。

認められるのは、相続放棄を熟慮期間中に出来なかった事について「相当な理由」がある場合だけですよ(最高裁判所判決昭和59年4月27日)

「相当な理由」がどういうものかというと、具体的には以下の3点を満たしている事が必要です。

  • ①亡くなった方と疎遠等の理由により、止むなく期限内に相続放棄出来なかった
  • ②相続人が借金の存在を知らなかった
  • ③相続した財産の処分をしていない

この3つの条件を満たしている場合は、実務上、熟慮期間経過後の相続放棄が認められることがあるようです。期限内に必要十分な検討が出来なかった方の相続放棄を一切認めないなんてしてしまうと、酷ですからね・・・。

そういう意味では、「亡くなった方の遺産の状況を知った時点から3ヶ月が経過していない」という条件も満たしていると、より裁判所に認めてもらえる可能性が高くなるでしょう。

督促状

なお、亡くなった人宛に借金の督促状や債務通知などが債権者から届く事があります。

「なんだか見慣れない書類だから」と開けずに放置してしまう人もいるようですが、必ず内容をチェックするようにしましょう。

これを無視していた為に借金に気づかなかったような場合、「督促状が届いているはずだから、当然借金があったことは知っていますよね?」と考えられ、裁判所が「相当な理由」として認めてくれなくなるので注意が必要です。

亡くなった方宛に通知などが届いたら、必ず内容を確認して、何かしらの手続きが必要なものなのかどうか判断するようにしましょうね。

また、亡くなった方と同居していた場合も、「財産の状況を把握することが出来ただろう」、ということで例外の適用は難しいでしょうね。

熟慮期間を過ぎた後の相続放棄手続きは、相当な理由を説明する上申書が必要ですし、法律的な判断が難しい部分でもあるので、弁護士さんや司法書士さんに相談することをお勧めします。ただし、弁護士さん等に依頼しても、なんともならないケースもあります。

ちなみに、熟慮期間経過後に相続放棄をして家庭裁判所に却下された場合、もう一度初めから相続放棄の手続きをするなんて事は出来ません。

ただし、却下された事について不服がある場合は、高等裁判所で再審理をしてもらうことが出来ます(これを「即時抗告」と言います)。

「却下された理由をしっかりと分析し、即時抗告をしたら相続放棄が認められた」、というケースもあるようなので、却下された方は一度弁護士さんに相談してみてはどうでしょうか。

まとめ

チェックリスト

相続放棄の期限について書いて来ました。

簡単にまとめると以下のような感じですね。

  • 相続放棄は自分に相続があった事を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを!
  • 期限内に手続きをしなかった場合は、原則として相続放棄出来ず全ての資産・負債を相続する!
  • 相当の理由によって期限内に相続放棄が出来なかった場合、期限後の相続放棄が認められる可能性あり!
  • やむを得ない事情により期限内に相続放棄出来ない場合、家庭裁判所に申立をすれば期限の延長が可能。

亡くなった方の遺産を放棄するのは心苦しいですが、借金が多い場合はそうもいってられません。期限内にしっかりと相続放棄の手続きをするようにしましょうね。

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