原作者が死亡。相続人がいない場合、著作権や印税は誰のものになる?

投稿日
2019年10月28日
更新日
2019年10月30日
column

著作権はどうなる?

「有名な漫画の原作者が亡くなったってニュースをやってたけど、今後の印税って誰が取得するのだろう?」

「著作権を持っていた人が亡くなったけど、相続人がいない!著作権ってどこにいくの?」

こんな疑問を抱いた方や、実際にこのような相続に直面して悩んでいる方もきっといるでしょう。

こんにちは。相続税を専門に取り扱っている「税理士法人ファンウォール」、税理士の山中です。

もう結構前の話ですが、みんなに愛される漫画「アンパンマン」の著者である「やなせたかし」さんが、2013年に亡くなりました。他にも有名な著者や音楽家などたくさんいますが、みんな人間なのでいつかは亡くなります。

ここで気になることはありませんか?

「アンパンマンの著書ともなると莫大な印税が毎年入っていただろうけど、それはどこにいくの?」という点です。しかも、やなせさんに限っていうと、亡くなった時点で身寄りはなかったようです。

このような場合、著作権や今後の印税は一体誰のものになるのでしょう。

著名な作家や音楽家に限らず、身内で小説や料理本などを出版して印税をもらっていた人が亡くなるケースもあるでしょうから、皆さんにも無関係な話とは言い切れません。

そこで、ここでは相続専門の税理士である私が、「著作権とは何か?」から「著作権の相続や相続税」などについてまでわかりやすく解説していきますね。

ポイントは以下の通りです。

  • 著作権には「著作権」と「著作者人格権」がある!
  • 著作権は相続できるが、著作者人格権は相続できない!
  • 相続人がいない場合、著作権は消滅する!
  • 著作権を相続したら相続税がかかる!

では一緒に見ていきましょう。

著作権とは?

著作権とは、自分の思想や感情を創作的に表現したもので、文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの(これを「著作物」と言います)に関する権利のことを言い、以下の2つに分かれます。著作権法第2条1項1号)

  • 著作権(財産権)・・・著作物の使用を許可して、使用料を受け取る権利
  • 著作者人格権・・・著作物を公表する権利や、名前を表示する権利

参考:著作権は特許権や実用新案権などと同様に、知的財産権の一種です。

要は、「作品は作り出した人のものである」として守る権利のことですね。
具体的には、小説や漫画、音楽、美術品、コンピュータープログラムなどに著作権が与えられます。

例えば、村上春樹さんの「海辺のカフカ」や、尾田栄一郎さんの「ワンピース」、ジョージ・ルーカスさんの「スター・ウォーズ」なども、全て著作権によって保護されているので、使用する場合は著作権使用料を支払わなければなりません

著作権のイメージ画像

誰でも勝手に無料で使えるなんてことにすると、頑張って作った人が報われないですからね・・・。

なお、著作権は著作物を作り出した時点で自然に発生する権利なので、どこかで登録したり申請したりする必要はありません。

また、日本の場合、著作権は著作権者が生きている間はもちろん、死後も以下の年数にわたって存続し続けます著作権法第51条2項)

著作者等存続年数
実名の著作物
(皆が知っているならペンネームでもOK)
著者の死後70年
無名や団体の場合公表や創作から70年
映画公表や創作から70年

参考:期間の計算を簡単にするため、死亡や公表、創作をした年の翌年の1月1日からカウントされます。また共同著作物の場合は、最後に死亡した人の死亡日が基準。

著作権の保護期間は国によって異なりますよ。、イランのように死後30年と短めの国もあれば、メキシコのように死後100年と長期間保護される国もありますよ。

例えば、「鉄腕アトム」や「ブラックジャック」などで有名な手塚治虫さんは、1989年(平成元年)に亡くなりました。

手塚治虫という名前自体はペンネームですが、日本で知らない方は殆どいないでしょうから、実名の著作物として、作品は死後70年間保護されます。

従って、1990年1月1日から70年なので、保護期間は2059年12月31日までですね。

著作権(印税)は相続の対象!

著作権

上で書いたように、著作権はどこかに申請することなく、創作した時点で自然に発生する権利です。

権利は形のないものですが、相続することが出来るのでしょうか?

この点、相続が発生すると被相続人(=亡くなった人)が持っていた一切の権利義務を承継するので民法第896条)著作権も相続財産として相続人が相続することになります。

参考:著作権以外にも特許権や実用新案権、工業所有権などの権利も相続の対象です。

なお、著作権は当然に相続の対象となるので、特段の手続きは不要です。

他の財産と同じように、遺言を残したり遺産分割協議をすることで取得する相続人を決めればOK。もちろん、遺言で法定相続人以外の人を指定すれば、その方に遺贈することも可能です。

遺言がない場合、遺産分割協議が終わるまでは著作権は相続人全員で共有となります。共有中は著作権の行使に全員の承諾がいるので、なるべく早く分割協議を済ませたいですね。

ただし、著作権を分割するのであれば、文化庁に著作権の移転登録が必要なので忘れずに(参照元:登録の手引き | 文化庁

札に書かれた著作権の文字

一方で、「著作者人格権」は一身専属権といって、その人にのみ与えられる権利なので相続はできません。

著作者人格権も相続出来るなんてことになると、著作者を相続した人の名前に変えることが出来てしまいますからね・・・。

例えば、マイケルジャクソンの作った歌の著作権を子供が相続したからといって、その歌を作ったのが息子とはならないですよね。「著作者人格権を相続できない」とは、そういうことです。

なお、相続人が相続放棄をした場合は、はじめから相続人ではなかったものとして扱われるので、著作権も当然相続することは出来ないですよ。

【参考】公正証書遺言で著作権に関する記載をするには?

著作権を、遺言で誰に取得させるか決めておく場合の記載例を参考に見ておきましょう。ここでは、一般的な著作物とJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)に信託している著作物(*)について紹介しますね。

*:作詞者や作曲者、音楽出版社が著作権の管理をJASRACに任せているケースのことです。

まずは一般的な著作物の場合。

一般的な著作物がある場合の遺言書の書き方
著作権はより具体的には、複製権や上演権、放送権、口述権など様々な権利に分かれます。これらをそれぞれ別個に相続させることもできますよ。

次に、JASRACに信託している著作物の場合。

JASRACに信託している著作物がある時の遺言書

JASRACの場合、著作権は同協会に信託された状態になっています。
従って、著作権自体を相続するのではなく、著作権から生じる利益を受ける権利(受益権)を相続することになりますよ。

【改正あり】著作権の相続は登録をしないと第三者に対抗できない!

2018年の著作権法改正(2019年7月1日施行)により、著作権を相続した場合は(文化庁に)登録をしないと第三者にその権利を対抗できないこととなりました著作権法77条

参考:従来ものこの条文はあったのですが、相続その他の一般承継によるものは対象から除外されていました。

法改正のイメージ

どういうことなのかを、例を使って見てみましょう。

著作権者Aさんが、生前に知り合いのBさんに対して自分の著作権を譲渡したとします。そして、Bさんが著作権の登録をする前にAさんが亡くなりました。

AさんにはCさんという配偶者がいます。CさんはAさんがBさんに対して著作権の譲渡をしたことを知りません。(ここでは、Cさんはいわゆる善意の第三者です。)

この場合、誰が本当の著作権者なのでしょうか?

普通に考えると先に著作権の譲渡を受けたBさんですよね。しかし、Bさんは譲渡を受けた際に著作権の登録をしていません。

答えは、「先に登録をした方が正式な著作権者となる」、です。

著作権者の対抗要件

もしBさんが先に登録をすれば、Bさんが正式な著作権者ですし、Cさんが先に登録をすればCさんが正式な著作権者となります。

このように、相手に対して自分の権利を主張することを法律では「対抗」といい、著作権では先に登録をした人が他の第三者に対抗することができるのです。

「第三者に対抗」という話がよく出てくるのは不動産ですね。不動産は契約やお金の支払などではなく、登記が対抗要件となっています。

後々揉め事にならないためにも、相続に限らず著作権は必ず登録するようにしましょうね。

相続人不存在の場合、著作権や印税はどうなる?

印税のイメージ

通常の相続では、相続人が誰もいない場合は相続財産管理人が選任され、相続人や債権者などを探します。そして、それでも行き場を失った財産は、最終的に国庫に帰属するものとされています民法第959条

相続人がいない?相続人不存在だと財産はどうなる?手続きは?【記事未了】

では、相続人がいない場合、著作権は国庫に帰属してしまうのでしょうか?やなせさんの例でいうと、アンパンマンは国のものになってしまうのでしょうか?

答えは「No」です。

著作権には特別の規定が用意されており、相続人がいない(特別縁故者も含む)場合は著作権は消滅することになっています著作権法第62条1項)

参考:映画の著作権が消滅する場合は、映画の原著作物である小説やシナリオなどの著作権も、映画の利用に関する限りにおいて消滅します(著作権法第62条2項)。

相続人がいない場合の財産の帰属先

なお、著作権が消滅するからといって、その作品を誰も使えなくなるという訳ではありあません。むしろその逆で、誰でも自由にその作品を使えるようになるのです。

なぜこんな規定になっているのかというと、「著作権を国に帰属させて国が使うよりも、公共の財産として誰でも使えるようにした方が、文化の発展に貢献するだろう」と考えられたからですね。

共同作業物だった場合、著作権者の1人が亡くなると残りの著作権者が持分を取得することになります。従って、亡くなった方に身寄りがなかったとしても、著作権は消滅しません民法第255条

従って、著作権者に相続人がおらず、生前に遺言で相続人以外の方に遺贈すると決めていなかった場合、著作権は国庫には帰属せずにそのまま消滅することになります。

なお、通常、テレビアニメや映画などは著作権者からライセンスを受けた会社等が制作していますが、ライセンス契約は著作権者が亡くなった後も存続します。

ただし、相続人がおらず著作権自体が消滅してしまう場合は、ライセンス契約も終了することになるでしょうね。

JASRACに著作物を信託していた場合

JASRACに信託した曲のイメージ

著作権を信託していない場合の相続人不存在について書きましたが、JASRACに楽曲の管理を任せているケースは少し取り扱いが異なります。

結論から言うと、JASRACに管理を任せている著作権は、相続人不存在の場合は最終的に国庫に帰属することになりますよ。

というのも(上でもちらっと書きましたが)、JASRACに著作物を信託している場合、著作権自体はJASRACに譲渡しているので、著作権から生じる利益を受け取る権利(信託受益権)を持つことになります。

つまり、著作権者が持つのは著作権ではなく、信託受益権なのです。

参考:JASRACに限らず、自分の著作権を管理することを目的とした法人を設立し、そこに著作権を信託譲渡した場合も同様です。

信託受益権は著作権ではないので、著作権法の適用はありません。

では、どうなるか?

この場合は、原則に戻って民法を基準に考えることになるでしょうね。

つまり、相続人不存在の場合は、最終的に国庫に帰属するのです。

不動産や株式等だけでなく、信託受益権も国有財産となることができます国有財産法2条第1項第6号)

なお、著作権の信託は使用形態を限定して行うこともできます。例えば、著作権の中でも楽曲をネット配信する権利だけは自分の手元に置いておくといった感じ。

このようなケースでは、著作権のうち、自分で管理していた部分は死亡により消滅し、JASRACに信託していた部分は国庫に帰属するという、妙な形になることが考えられますね。

著作権の相続税評価を解説

税金と電卓

著作権も、他の財産と同様に相続できることが分かりました。

つまり、著作権も相続税の対象になるという事です。

国税庁のホームページでは、「相続税がかかる財産」として以下の説明がされています。

財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます

著作権もしっかり含まれていますね!
著作権を相続した方は、その後も印税をもらえるので、著作権自体に財産としての価値がありますからね。

しかし、著作権は形のない権利です。相続税の計算をする際に、どのように評価すればいいのでしょうか?

この点、国税庁の財産評価基本通達148で、著作権の評価は以下の計算式によって「著作者ごとに一括して」行うことが定められています。

著作権の相続税評価方法

参考:著作隣接権(著作物を世に伝えるために重要な役割を果たしている実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者に認められた権利)も同様の方法で評価します。

計算式中の「0.5」は、評価の安全性を担保するための斟酌率(しんしゃくりつ)と言われています。

つまり、年平均印税収入と評価倍率の2項目が分かれば、著作権の評価は出来るということです。

例えば、年平均印税収入が500万円で、評価倍率が30だった場合、著作権の評価額は7,500万円(=500万円×0.5×30)ですね。

では、以下でそれぞれの項目について見ていきましょう。

「年平均印税収入額」は過去3年の印税収入平均額のこと

年平均印税収入額とは、著作者の亡くなった年以前3年間の印税収入の平均額のことです。

年平均印税収入額の出し方

また、著作物にかかる著作権ごとに個別に評価する場合は、著作物に係る課税時期の前年以前3年間の印税収入の年平均額となります。

著作権は、(実際にどうかは別として)年平均印税収入が毎年続くものと想定しているので、1年ごとに細かく計算することは求められていない、という訳ですね。

過去3年間で印税をもらっていると相続税がかかるけど、逆にいうと印税が発生していないのであれば、著作権をもっていたとしても相続税は課税されないということですね。

「評価倍率」の出し方

評価倍率とは、国税庁の評価通達の言葉を借りると、以下の通りとなります。

課税時期後における各年の印税収入の額が「年平均印税収入の額」であるものとして、著作物に関し精通している者の意見等を基として推算したその印税収入期間に応ずる基準年利率による複利年金現価率とする。

複利年金現価率とは、一定期間継続的に支払われる金銭の現在価値を複利計算で求めるために使うものです。

とてもややこしい表現ですね・・・。なんのことかさっぱり分からない、という方もきっといるでしょう。

特に「著作物に関し精通している者の意見等を基として推算したその印税収入期間」ってなんぞや!?って思いますよね。

これは、要は「相続発生後どれくらいの期間にわたって印税が発生するのか、専門家に確認してください」ということです。

例えば本を出版したのであれば、出版社に問い合わせるといいでしょう。著作者の相続なんて日常茶飯事でしょうから、すぐに教えてくれると思いますよ。

そして、印税をもらえるであろう期間が分かったら、次は基準年利率と複利年金現価率ですね。これらについては国税庁のホームページで公表されています。

まずは、基準年利率について見てみましょう。基準年利率は、毎年基準年利率を定める都度、以下のような形で公表されます(下表は平成30年1月〜12月分です)。

平成30年分基準年利率(画像参照元:平成30年分の基準年利率について(法令解釈通達)|国税庁

次に、複利年金現価率ですね。これは基準年利率と同じタイミングで公表されます。

平成30年分複利表(画像参照元:複利表(平成30年1~12月分) | 国税庁

この2つの表を使って、評価倍率を求めます。

例えば、評価時点でまだ残り40年にわたって著作料がもらえる場合、基準年利率は7年以上なので長期の「0.25%」を使います(亡くなった月分の値を使用)。

そして、複利表の中から、年0.25%の複利年金現価率(40年)の欄を見てみると、「38.020」となっていますね。これが評価倍率という訳です。

【参考】印税と著作権、所得税と相続税の二重課税では?

著作権には、相続財産として相続税が課税されます。
そして、著作権を相続した相続人は、1年間に受け取った印税に対して雑所得として所得税の確定申告が必要です。

相続税が課された上に、その後で所得税も課税されるのは二重課税ではないの?と考える人もいるでしょう。

印税と著作権の相続は二重課税にならないの?

確かに、相続したときに将来印税をもらえる予定の期間を推測して著作権の評価をして相続税を払っているのに、実際に印税を受け取ったらさらに所得税も払わないといけない、なんだかおかしな気がしますよね・・・。

しかし、このような話は実は他にもあります。

例えば、土地を相続すると相続税がかかり、相続後にその土地を譲渡すると今後は所得税が課税されますよね。

また、年金型の保険についても、相続発生時に「定期金に関する権利」として相続税が課税されているのに、その後で年金を受け取ると所得税が課税されます。

年金型の保険については、「相続税と所得税を課すのは二重課税のため違法である」と、最高裁の判決が出た例(2010年7月6日)もあるにはあります。

このように、二重課税されていると感じるものも多々ありますし、学者の間でも意見が分かれているらしいですが、現在の税法はそのようになっているので、納税者としては基本的に法律に従って納税するしかないですね・・・。

とはいえ、気になる場合は一度専門家に相談してみるといいでしょう。

最後に

著作権は相続できるのか、相続人がいない場合はどうなってしまうのか、などについて見て来ました。

著作権は何かを作った時に、自動的に発生する権利で相続の対象となります。

著名な方の作品などになると、著作権を巡って相続争いとなるケースもあるでしょうから、揉めないようにしっかりと対策をしたいですね。

また、相続税評価も必要なので、相続税申告の際には忘れないようにしましょう。

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