【具体例付】相続の際の遺留分の計算方法と割合をパターン別に解説

投稿日
2020年03月03日
更新日
2020年03月09日
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遺留分の割合と計算方法

「遺言が残されていたけど、自分の取り分が少ない感じがする!遺留分の割合はどうなってるの?計算方法は?」

こんにちは、相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

相続が発生して、残されていた遺言状を開けてみると「自分の取り分が少なかったor無かった」というケースがありますよね・・・。

相続人には遺留分が認められているので、遺留分を侵害された場合は遺留分侵害額請求権を行使して足りない分を返してもらうことが可能です。

では、この遺留分は一体どうやって計算するのでしょうか?遺留分がどれくらいあるのかを知らなかったら、そもそも遺留分を侵害されているのかどうかも分からないですよね・・・。

そこで、ここでは遺留分の計算方法や割合について、相続税専門税理士の私がパターン別に分かりやすく解説していこうと思います。

ポイントは以下の通り。

  • 遺留分は「総体的遺留分×法定相続分の割合」で算出
  • 兄弟姉妹に遺留分はない!
  • 遺留分の対象となるのは相続財産だけではない!

では、いっしょに見ていきましょう。

「遺留分を侵害されたかも!」という相続人だけでなく、「遺留分を侵害しないような遺言を書きたい!」と考えている方も是非参考にしてくださいね。

【簡単におさらい】遺留分とは?

遺留分の割合や計算について見る前に、「遺留分がそもそも何なのか」について簡単におさらいしておきましょう。

まず、遺留分とは「法律によって守られた最低限の相続分のこと」です。

相続が発生すると、法定相続人は被相続人(=亡くなった人)の残した財産を相続するのですが、遺言が残されていた場合は法定相続人や法定相続割合に関わらず遺言の内容に従って財産を分けることになります。

平等な分け方になっていれば特に問題はないでしょうが、中には特定の相続人や第三者が全て(若しくは大部分)の財産を取得することになっているケースもあるでしょう。

通常であれば、財産をもらえなかった相続人は「私も相続人なんだから、いくらかはもらう権利があるはずだ!」と思いますよね。

遺留分

この様に、相続人予定者の中には「最低でもこれくらいは相続することになるんだろうな」という期待があります。

法律はその「期待」を保護すべきだと考えたのです。

そこで、法律上最低限の相続分を遺留分として保護することになりました。

参考:相続欠格や相続廃除になった人、相続放棄をした相続人には遺留分が認められません。ただし、欠格者や廃除された者の代襲相続人には遺留分は認められます。また包括受遺者にも遺留分はないです。

具体的には、遺留分が侵害されている場合、侵害した相続人受遺者に対して「私には最低でも遺留分をもらう権利があるから、遺留分に見合う財産を返して下さい!」と主張することが出来ます。

これを遺留分侵害額請求と言いますよ。

遺留分は法律によって保護された権利なので、期限内に遺留分侵害額請求権を行使する限り、基本的に侵害した相続人は遺留分に見合う財産を渡さなければなりません。

遺留分侵害額請求権とは?手続き方法・費用・請求時の注意点まとめ

家族関係図

なお、遺留分は相続人であれば誰にでも認められるという訳ではありません。

遺留分が認められているのは、以下の相続人です民法第1028条)

  • 配偶者
  • 子(直系卑属)
  • 親(直系尊属)

この中に兄弟姉妹は入っていないですよね。従って、兄弟姉妹には遺留分はありません(甥・姪も同様)

【要注意】遺留分は兄弟には認められていない!泥沼の遺産相続を防ぐために出来ることは?

では、遺留分はどういったときに問題になるのでしょうか?この点、家族円満な場合は特に気にする必要がないのですが、以下のようなケースに該当すると遺留分を巡って争う可能性が高いですよ。

  • 親が実家を継ぐ長男に全ての財産を相続させた
  • 父親が生前の愛人に全ての財産を遺贈した
  • 前の配偶者との間に子供がいるのに、今の子供に財産を全て相続させた
  • 相続人が妻と兄弟のケースで、妻に全ての財産を相続させた
遺留分が問題になるのは遺言が残されている場合です。遺産分割協議が成立したあとで自分の取り分が少ないからと言って遺留分を主張することは、一度その内容で合意しているので難しいでしょうね。

遺留分のおさらいをしたところで、本題である遺留分の割合について以下で見ていきましょう。

【パターン別】遺留分の割合

遺留分は誰が相続人なのかによって異なります。

結論から書くと、各パターンごとの遺留分は以下の通り。

相続人 
遺留分全体の合計
(対相続財産)  
各相続人の遺留分
(対相続財産) 
配偶者子供父母兄弟
配偶者のみ1/21/2
配偶者と子供1/21/41/4
配偶者と父母1/22/61/6
配偶者と兄弟1/21/2
子供のみ1/21/2
父母のみ1/31/3
兄弟のみ
遺留分全体のことを「総体的遺留分」、各相続人個人の遺留分を「個別的遺留分」と呼ぶこともありますよ。個別的遺留分は「総体的遺留分×法定相続割合」で算出します。

では、以下で各パターン毎に見ていきましょう。

相続人が配偶者だけの場合

相続人が配偶者だけの場合は、配偶者の遺留分は全体の相続財産の1/2です。

例えば、相続財産が1億円で相続人が配偶者のみだった場合、配偶者の遺留分は5,000万円(=1億円×1/2)となります。

相続人が配偶者と子供の場合

配偶者と子の場合の遺留分

相続人が配偶者と子供1人の場合、遺留分はそれぞれ1/4ずつです。

従って、例えば、相続財産が1億円で相続人が配偶者と長男だった場合、配偶者と長男の遺留分はそれぞれ2,500万円(=1億円×1/2×1/2)となります。

一方で、相続人が配偶者と子供2人の場合は、遺留分は配偶者が1/4で子供はそれぞれ1/8(=1/4÷2人)です。子供が増えると、子供の頭数で遺留分を分けることになります。

配偶者と子2人の場合の遺留分

例えば、相続財産が1億円で相続人が配偶者と長男・長女だった場合、配偶者の遺留分は2,500万円で長男・長女の遺留分はそれぞれ1,250万円(1億円×1/2×1/2×1/2)となりますよ。

既に相続人である子が亡くなっている場合は、子に子がいるのであれば代襲相続となります。代襲相続の場合も遺留分は子と同じです(代襲相続人が複数人いる場合は頭数で按分)。

相続人が配偶者と直系尊属の場合

配偶者と直系尊属の場合の遺留分

相続人が配偶者と親(直系尊属)の場合、配偶者の遺留分は1/3で直系尊属の遺留分は1/6となります。

従って、相続財産が1億5千万円で相続人が配偶者と父親のケースだと、配偶者の遺留分は5,000万円(=1億5千万円×1/3)で父親の遺留分は2,500万円(1億5千万円×1/6)です。

両親が健在の場合は両親は1/6の遺留分を2人で分けるので、父・母共に1/12ずつとなります。

相続人が子供だけの場合

子のみの場合の遺留分

相続人が子供だけの場合、子供の遺留分は1/2となります。

従って、相続財産が1億円のケースだと、子供の遺留分は5,000万円(=1億円×1/2)ですね。

なお、他と同様に子供が複数いる場合は頭数で遺留分を分ける事になりますよ。

例えば、相続財産が1億円で子供が4人いる場合は、各相続人の遺留分は1,250万円(=1億円×1/2÷4人)です。

相続人が直系尊属だけの場合

直系尊属だけの場合の遺留分

相続人が親(直系尊属)だけだった場合、遺留分は1/3です。

従って、相続人が父親のみで相続財産が1億5千万円のケースだと、父親の遺留分は5,000万円(=1億5千万円×1/3)となります。

相続人が兄弟姉妹だけの場合

兄弟姉妹のみの場合の遺留分

兄弟姉妹には遺留分は認められていません。従って、相続人が兄弟姉妹だけの場合、遺留分はゼロです。

つまり、遺言で兄弟姉妹以外の誰かに全ての財産を渡す旨の記載があった場合、兄弟姉妹は打つ手が無いということですね。

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

配偶者と兄弟姉妹の場合の遺留分

相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者の遺留分は1/2で兄弟姉妹の遺留分はゼロです。

従って、例えば相続人が配偶者と兄で相続財産が1億5千万円のケースだと、配偶者の遺留分は7,500万円(=1億5千万円×1/2)で兄の遺留分はゼロとなりますよ。

兄弟姉妹に遺留分はないので、遺留分全体を配偶者が取得するという考えですね。

【補足】養子がいる場合の遺留分

相続人の中に養子のいるケースがありますが、養子の遺留分はどうなっているのでしょうか?

この点、養子の相続分や遺留分は実子のそれと違いありません

従って、養子がいる場合は上で紹介した子供がいる場合に準じて遺留分の計算をすることになります。

なお、養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組とがありますが、どちらの場合も相続分・遺留分共に違いないですよ。

【補足】相続放棄や遺留分の放棄をした人がいる場合の遺留分

相続財産の中に多額の借金があるようなケースでは、相続人が相続放棄をすることが考えられます。多額の借金を好んで相続するなんて人はあまりいないでしょうからね。

では、相続人の一部に相続放棄をした人がいる場合、遺留分はどうなるのでしょうか?

この点、他の相続人が相続放棄をしたことによって、残りの相続人の法定相続分が増える場合は、それに伴って遺留分が増えることになりますよ。(相続放棄をすると初めから相続人では無かったことになりますからね。)

例えば、相続人が配偶者と子供3人の場合、各相続人の遺留分は配偶者が1/4で子供は1/12(=1/2×1/2×1/3)ずつです。 ここで、配偶者が相続放棄をした場合、配偶者の相続分は子供が引き継ぐことになるので、子供の遺留分は1/6(=1/2×1/3)ずつに増えます。

相続放棄の際の遺留分
法定相続人が配偶者のみのケースで配偶者が相続放棄をした場合など、相続人がいなくなるときは遺留分も関係なくなります。

また、相続発生前に相続人予定者が家庭裁判所に申し出て遺留分の放棄をすることもありますよね。

この場合は、遺留分を放棄したとしても他の相続人の遺留分が増えることはありません民法第1043条2項)。遺留分の放棄をしたからといって法定相続分に影響はないですからね。

放棄された遺留分については、相当の財産を被相続人が遺言で他の相続人に振り分けることになります。つまり、被相続人が自由に処分することの出来る財産が増えるということですね。

遺留分の割合まとめ

最後に、各パターンの遺留分割合を再度表形式でまとめておきますね。

相続人 
遺留分全体の合計
(対相続財産)  
各相続人の遺留分
(対相続財産) 
配偶者子供父母兄弟
配偶者のみ1/21/2
配偶者と子供1/21/41/4
配偶者と父母1/22/61/6
配偶者と兄弟1/21/2
子供のみ1/21/2
父母のみ1/31/3
兄弟のみ

なお、遺留分の割合を考える際には、以下の4つのポイントに注意するようにしましょう。

  • 親(直系尊属)のみが相続人の場合、相続財産の1/3が遺留分。
  • それ以外の場合は、相続財産の1/2が遺留分の合計になる。
  • 同順位の相続人が複数いる場合は、頭数で割って各相続人の遺留分を算出。
  • 兄弟姉妹には遺留分はない。

相続時の遺留分の計算方法は?

遺留分の割合について解説をしてきましたが、実際の遺留分を計算する場合は相続財産がいくらかを把握するだけでは足りません。

なぜなら、遺留分の対象となる財産は相続発生時に残っていた財産だけではないからです。

そこで、以下では遺留分の対象になる財産の範囲や具体的な遺留分の計算方法などについて解説していきますね。

遺留分の対象になる財産の範囲

遺留分の対象財産

遺留分の計算をする際に対象となる財産は、相続発生時に被相続人が持っていた財産だけではありません。

もし相続時に残っていた財産しか遺留分算定の対象にならないのであれば、亡くなる直前に特定の相続人等に多額の贈与をしておいて、残った財産を平等に分ける様な遺言を残しておくと、遺留分の侵害が発生しなくなってしまいますからね。

それだと、普通に考えて財産を少ししかもらえなかった相続人に酷ですよね・・・。

そこで、遺留分の対象となる財産は以下の通りとされています。

  • 特別受益(*1)となる生前贈与(相続開始前10年以内のもの *2
  • 特別受益とならない生前贈与(相続開始前1年以内の贈与が対象)
  • 遺留分権利者に損害を与えると知った上で行われた特別受益に当たらない生前贈与(時期を問わない)
  • 相続発生時の相続財産(負債は除く)
*1:「特別受益とされる生前贈与とは、相続人に対して行われた婚姻・養子縁組・生計の資本となる生前贈与のことです(民法第904条)。一概に決まっているものではなく、贈与金額や扶養の必要性などから生計の資本となるかを判断します。一般的に不動産を購入するための資金援助は特別受益ですが、扶養の範囲内で行われる教育費や生活費の贈与は該当しません。
*2:相続法(民法)改正以前は、特別受益にあたる生前贈与は期間に関係なく遺留分算定対象となっていましたが、今般の改正により相続開始前10年以内のものに限定されました。

図と計算式で表すと、以下のような感じですね。

遺留分割合の算定基礎と計算式

なお、以下の財産は基本的に遺留分算定の基礎には含まれません。

  • 祭祀財産
  • 生命保険金
  • 死亡退職金
  • 一身専属的な権利

【計算例あり】遺留分の計算方法

電卓で計算する人

ここでは、具体的な例を用いて遺留分の計算をしてみましょう。

前提条件は以下の通り。

  • 相続人は配偶者・長男・長女の3人
  • 相続財産は1億5千万円
  • 相続開始1年前までに行われた贈与は3千万円
  • 被相続人から長男へ行われた特別受益(生前贈与)は2千万円
  • 債務は2千万円
  • 遺言で指定された相続分は、配偶者9千万円・長男4千万円・長女2千万円、債務は全額配偶者が相続

このケースでは、遺留分の算定基礎となる財産は1億8千万円(=1億5千万円+3千万円+2千万円-2千万円)です。

そして、各相続人の遺留分割合は、配偶者が1/4で長男・長女はそれぞれ1/8ずつとなります。

従って、遺留分の額は以下の通りですね。

  • 配偶者・・・4,500万円(=1億8千万円×1/2×1/2)
  • 長男 ・・・2,250万円(=1億8千万円×1/2×1/2×1/2)
  • 長女 ・・・2,250万円(=1億8千万円×1/2×1/2×1/2)

遺言で上記の金額を下回っている場合は、遺留分が侵害されていることになるので侵害された相続人は遺留分侵害額請求をすることが可能です。

なお、参考までに書いておくと、遺留分を実際に侵害されているかどうかは、以下の計算式で判断しますよ。

遺留分-(相続財産の額-債務の額)-(特別受益の額+遺贈の額)

この計算式がマイナスになったら遺留分以上の遺産を貰っていることになり、プラスになると遺留分が侵害されていることになります。

これを各相続人について当てはめてみると、以下の通りとなります。

  • 配偶者:4,500万円-(9,000万円-2,000万円)-(0円+0円)=△2,500万円・・・遺留分の侵害は無し
  • 長男:2,250万円-(4,000万円-0円)-(2,000万円+0円)=△3,750万円・・・遺留分の侵害は無し
  • 長女:2,250万円-(2,000万円-0円)-(0円+0円)=250万円・・・遺留分を250万円侵害されている

従って、長女は250万円分の遺留分侵害額請求をすることが出来るということですね。

遺留分対象となる財産額はいつの時点で評価する?

たとえば3年前に1,000万円の不動産を贈与されていた。⇒相続開始時点でその不動産の時価が1,500万円にあがっていた。

この場合、1,000万円と1,500万円のどちらを遺留分の算定対象とするか?

というと1,500万円の方です。

そもそも、遺留分権が発生するのが「相続開始時点」なので、過去の贈与の評価額は相続開始時を基準に求めます。

ただし、相続税の計算上は贈与時の時価を基準として計算していくことになりますよ相続税法第19条1項。ややこしいですけどね・・・。

また、現金・預金など貨幣価値の変動があるものを過去に贈与されていた場合には、物価指数等に応じて相続発生時点の価額に換算し直す必要がありますよ。

贈与された財産が相続時点で既に無い場合

受贈者の行為によって贈与財産が既に無くなっている場合には、これが相続開始時点で存在するものとみなして尚且つ相続開始時の時価で遺留分算定の対象財産として処理されます(参考:民法904条)

たとえば、300万円の居宅の贈与を受けたが、不要になったので取り壊したーなんていうケースでは、相続開始時点では居宅は既に無いものの、遺留分の計算上は居宅が存在するものとして処理しますよ。

ただし、地震など不可抗力事由によって贈与財産が滅失等した場合には、遺留分の計算対象には含めません。

遺留分計算シートを使うと簡単に計算出来る!?

遺留分の計算方法や割合について見てきましたが、いざ相続人毎の遺留分を計算するとなると「面倒くさい・・・」「よく分からない・・・」という方もいるでしょう。

そういう方のために、東京弁護士会が訴訟に使う際の遺留分計算シートをエクセルで用意してくれていますよ。

必要な事項を入力すれば自動で計算してくれるのでとても便利です。興味のある方は一度使ってみるといいでしょう。

遺留分計算シート(東京弁護士会)

注意:細かい使い方等については東京弁護士会に問い合わせるようにしてください。

最後に

遺留分の割合や計算方法について紹介してきました。

各家庭の相続人の状況によって遺留分は異なってきます。自分の遺留分がどれくらいなのかはしっかりと知っておいた方がいいでしょう。

また、何の説明もなしに遺言で遺留分の侵害が発覚すると、揉める可能性がとても高いです。

被相続人としては、揉めないように遺留分の侵害が起きないように考慮した遺言を作るか、侵害が避けられない場合は事前に相続人に説明をしておいた方がいいでしょうね。

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