リビングニーズ特約に基づく生前給付金は相続税が非課税なの?

投稿日
2019年11月04日
更新日
2019年11月05日
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リビングニーズ特約と相続税の関係

「余命宣告を受けたけど、生前給付金って受け取ったほうが良いの?」

「リビングニーズ特約で受け取った生前給付金に税金はかかるの?」

こんにちは。相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

病気の治療をしている際に、担当の医師から「余命○ヶ月ですね」と宣告を受けることがあります。本人にとっても家族にとっても、とてもつらい瞬間ですよね・・・。

余命宣告を受けるような状態であれば、きっと医療費もたくさん必要でしょうし、また、残された時間を有意義に使いたいとも思うでしょう。

そこで、各生命保険会社が用意しているリビングニーズ特約の出番ですね。この特約を使えば生前のうちに保険金の一部を受け取ることが出来るのです。

しかし、生前にお金を受け取った場合、所得税や相続税といった税金はどうなるのでしょうか?また、生前のうちに受け取ったほうが得なのか、死亡保険金として亡くなってから受け取った方が得なのか、どちらなのでしょう。

何も知らずに生前給付金を受け取ると、後々税金面で損をすることもあるので要注意ですよ。

ここでは、リビングニーズ特約に基づく生前給付金の税金の取り扱いについて、相続税専門の税理士である私が分かりやすく解説していこうと思います。

ポイントは以下の通りです。

  • 余命半年宣告で、死亡保険金の一部または全部を受け取れる!
  • 生前給付金は所得税が非課税!
  • 使いきれなかった生前給付金は相続税の課税対象!
  • 受け取った生前給付金に対しては、死亡保険金の非課税枠が使えない!

では、一緒に見ていきましょう。

リビングニーズ特約とは?

余命宣告された老人

リビングニーズ特約とは、生命保険の被保険者が医者に余命6ヶ月以内と診断された場合に、生きている間に死亡保険金の一部または全部(上限3,000万円)を先に受け取ることのできる特約のことです。

病気やケガの内容などは問いません。余命6ヶ月以内と医師に宣告されることが条件です。
参考:特約を付けても付けなくても保険料は変わりません。

通常、生命保険の保険金は契約時に設定した保険金受取人に対して死亡後に支払われるのですが、リビングニーズ特約を付けることで、被保険者自身が保険金の一部を受けることが出来るようになります。要は、死亡保険金の前払いですね。

被保険者が受け取った給付金は使い道が制限されている訳ではなく、医療費として使ったり余命期間を充実させるための資金として使ったりといったように、自由に使うことができますよ。

なお、当然といえば当然なのですが、保険金の一部または全部を前もって受け取るので、契約上受け取ることの出来る死亡保険金は同額が減額されます

例えば、死亡保険金が5,000万円でリビングニーズ特約を使って3,000万円を受け取ったのであれば、死亡時には保険金受取人に2,000万円の死亡保険金が支払われるということですね。

参考:減額された保険金に応じて、今後支払う保険料も引き下げられます。
保険金と保険料の関係の図解

また、死亡保険金が2,000万円で全額をリビングニーズ特約で受け取ったような場合は、その時点で保険契約は終了となるので、その後亡くなったとしても保険金は支払われません。

余命半年と宣告されても、それ以上生きるケースもあります。その場合でも、受け取った給付金を返還する必要はないですよ。

リビングニーズ特約は、当初契約で付けていなかったとしても、ほとんどの保険会社で中途付加出来るようになっています。

実際に余命半年と宣告された場合、給付金をもらうかどうかは自分で決めることができるので、とりあえず特約をつけておいたほうが良いでしょうね。

リビングニーズ特約で生前給付金を受け取ったときの税金は?

税金の積み木と貯金箱

死亡保険金は、被保険者が亡くなった後で受け取ると、契約内容に応じて以下の税金のいずれかが課税されることになります。

契約者や保険金受取人の関係課税される税金
契約者(保険料負担者)=保険金受取人の場合所得税
契約者(保険料負担者)=被保険者で保険金受取人が別の人の場合相続税
契約者(保険料負担者)≠被保険者≠保険金受取人の場合贈与税

死亡保険金に課税される税金3パターン(相続税・贈与税・所得税)

しかし、リビングニーズ特約に基づいて受け取るお金は生前給付金であって死亡保険金ではありません

したがって、税金の取り扱いも異なってきます。

以下で、生前給付金を受け取った際の税金関係について見ていきましょう。

所得税は非課税!

税金

リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合、受け取った人に所得税はかかりません。以下で理由を見てみましょう。

もともと疾病や重度障害になった際に支払わられる保険金については、所得税法施行令第30条第1号の定める「身体の傷害に起因して支払われる」保険金に該当するため所得税は非課税です所得税基本通達9-21

そして、リビングニーズ特約で受け取る生前給付金は、性格としては死亡保険金の前払いですが、受け取りの条件が余命半年以内となっており、死亡が条件とはなっていないので、上記の疾病や重度障害になった際に支払われる保険金に該当すると考えられます。

したがって、リビングニーズ特約で受け取る生前給付金は非課税となるのです。

残された人生を楽しもうと生前給付金をもらっているのに、そこから税金を取られたら残念すぎますからね・・・。そこはきちんと税金がかからないように考慮されている、という訳ですね。

(関連サイト:リビング・ニーズ特約に基づく生前給付金|国税庁

相続税は課税される!

財産調査のイメージ

リビングニーズ特約によって生前給付金を受け取った場合、所得税は非課税ですが相続税はどうなのでしょうか。

もともと死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」に相当する金額までは相続税が非課税となっているので相続税法第12条第1項第5号、気になるところですよね。

この点、残念ながら使いきれなかった現金分に対しては相続税の課税があります

なぜなら、受け取ったお金は現金として受取人の財産となるからです。

現金は相続財産なので、もし受け取った生前給付金を使い切れずに相続発生時点で残っていたのであれば、そのお金は本来の相続財産として、相続税が課税されることになります。

なお、生前給付金として受け取った現金については、死亡保険金の非課税枠の適用が無くなるので要注意です。

分かりやすく図解すると、以下のような感じとなりますよ。

生前給付金がある場合の相続税の課税関係
受け取った生前給付金を使い切れば、その分については相続税がかからないということですね。

受け取った生前給付金を家族の誰かにあげたりすると贈与税がかかるので要注意

1,000万円、2,000万円程度の生前給付金が一挙に入ってくると、「これまで迷惑もかけたし、家族にいくらか渡したい」と思うのも当然です。

しかし、本人が受け取った生前給付金に関しては所得税が非課税となるものの、もらった生前給付金を家族の誰かにあげたりすると贈与税が発生する場合がありますよ。

もし贈与する場合でも、税金面をしっかりと考えて贈与して下さいね。

ケース別に検証!生前給付金をもらった方がお得?もらわない方がお得?

電卓と税金

リビングニーズ特約による生前給付金をもらうと、使いきれなかった場合に相続税の課税対象となることが分かりました。

では、生前給付金はもらったほうが良いのでしょうか?それとも貰わずに死亡保険金として受け取った方が良いのでしょうか?

以下、こちらの4つのケースに分けて

  • 相続財産が基礎控除の範囲内だった場合
  • リビングニーズを使わなかった場合
  • 受け取った生前給付金を全額使い切った場合
  • 受け取った生前給付金を使い切れなかった場合

相続税の課税関係について見てみましょう。

なお、以下の事例は「相続人が配偶者と長男の2人」のケースを前提としています。

ケース1:相続財産が基礎控除の範囲内

相続財産がそもそも基礎控除の範囲内だった場合、相続税はゼロなので気にする必要がありません。

従って、生前給付金として使いたい分があるのであれば好きに請求して受け取って構わないですよ。

ただし、受け取った生前給付金を使い切れない場合は、相続人が遺産分割で揉めないために遺言などで対策をしておいた方がいいでしょう。

ケース2:リビングニーズを使わなかった

リビングニーズ特約を使わずに死亡保険金を受け取った場合、死亡保険金の非課税枠を超えた部分に対して相続税が課税されます。

例えば、死亡保険金が3,000万円、それ以外の相続財産が5,000万円だった場合、死亡保険金の非課税枠である1,000万円(=500万円×2人)を控除した7,000万円が相続税の課税対象となりますよ。

このケースの場合、相続税の総額は320万円です(計算過程は省略します)。

ケース3:受け取った生前給付金を全額使った

死亡保険金が3,000万円、それ以外の相続財産が5,000万円だった場合で、3,000万円のうち2,000万円を生前給付金として受け取り、全額使い切ったとしましょう。

死亡保険金として受け取るのは1,000万円で非課税枠の範囲内なので、相続税に影響ありません。

むしろ、そのまま受け取っていたら2,000万円は相続税の課税対象だったので、基礎控除を超える財産があるのであれば、節税できたことになりますね。

このケースでは相続税の課税財産は5,000万円で、相続税の総額は180万円となります。

ケース4:受け取った生前給付金を使い切れなかった

死亡保険金が3,000万円、それ以外の相続財産が5,000万円だった場合で、3,000万円のうち2,000万円を生前給付金として受け取ったものの、使いみちがなく1,500万円が残ったとします。

この場合、死亡保険金として受け取る1,000万円は、死亡保険金の非課税枠によって相続税が課税されません。しかし、残った1,500万円は現金として相続税の課税対象となります。

従って、相続税の課税対象となるのは6,500万円(=5,000万円+1,500万円)ですね。

このケースの場合、相続税の総額は245万円となります。

事例まとめ

リビングニーズ特約を使って生前給付金を受け取った場合と、受け取らなかった場合の相続税についてケース別に見てきました。

最後に、一覧でまとめておきましょう。

ケース内容相続税額
1相続財産が基礎控除の範囲内0円
2リビングニーズ特約を使わない320万円
3リビングニーズ特約で受け取った給付金を使い切る180万円
4リビングニーズで受け取った給付金を使い切れない245万円

今回の結果では、相続財産が基礎控除の範囲内のケースは例外として、非課税枠の分だけ死亡保険金を残して、受け取った生前給付金は全額使い切るのが一番相続税的には好ましいことがわかりましたね。

このように、生前給付金をどれくらい受け取ってどれくらい使うかによって相続税に影響が出てくる点は知っておいた方が良いでしょう。

相続税ももちろん重要ですが、何よりも重要視すべきなのは余命宣告をされた方の余生の過ごし方だと個人的には思います。いくら生前給付金をもらうかは本人の想いを尊重するようにしたいですね。

【税金以外】生前給付金を受け取るデメリット

生前給付金を受け取ることで、高額な医療費の足しにできたり、余生を充実させることができるといったメリットがありますが、受け取ることによるデメリットもいくつかあります。

ここでは、生前給付金を受け取ることによるデメリットや注意点について、税金以外の観点から見てみましょう。

相続発生時に預金が凍結されて引き出せなくなるかも。

預金通帳とキャッシュカード

生前給付金を受け取って全部使い切った場合は特に問題ないのですが、使い切れなかった場合は預金として残っていることになりますよね。

人が亡くなると、その人が持っていた預金口座は凍結されるので、相続手続きが終わるまでは基本的に引き出すことができなくなります。

死亡保険金であれば、受取人として指定されている人が請求すれば簡単に受け取る事ができるのですが、預金になっていることで手続きが終わるまで使うことができなくなってしまうのです。

相続で揉めていない家族であればいいですが、揉めている場合だと引き出すのがいつになることやら・・・。

ただし2019年7月より預貯金の仮払い制度が始まっているので、預金口座凍結のデメリットは少なくなっていると言えます。

保険金受取人が受け取る予定だった死亡保険金が減る。

生命保険証券

生命保険契約では、死亡保険金の受取人を指定しますよね。

例えば、保険金の受取人を長男にしていた場合で生前給付金を2,000万円受け取ったとしましょう。

被保険者は2,000万円を自由に使うことができますが、その結果、長男が相続時に受け取る財産が2,000万円減ることになります。

このように、「家族平等に財産を分けよう!」と考えていても、生前給付金を受け取ることで想定外に特定の相続人の受け取る財産が減ってしまうこともあるので、注意が必要ですね。

もし生前給付金のうち残りそうなお金があるのであれば、遺言で取得する人を指定するか、遺産分割協議をする必要があります。

代理人が生前給付金の請求をすると、本人に余命が知られてしまうかも。

医師が余命宣告をする場合、本人に知らせずに家族だけにその事実を知らせることがよくあります。本人が余命を知ると、ショックで生きるチカラを失ってしまうかもしれないからですね。

その場合、家族が指定代理請求人としてリビングニーズ特約の生前給付金を請求することになるでしょう。

悲しむ老人

ただし、生前給付金の請求をすると、上で紹介したように契約内容が変わり今後の保険料が減額されるので、保険会社からの契約内容変更の手紙や、預金通帳から引き落とされる保険料の変化などによって、本人が余命の事実を知ってしまう可能性があります。

家族も悪気がある訳ではないのですが、これによって家族関係が悪化してしまうこともあるので、注意が必要ですね。

生前給付金は、請求額よりも少ない額が振り込まれる!

例えば、3,000万円の生命保険契約をしていてリビングニーズ特約によって2,000万円を受け取ろうとした場合、2,000万円を請求しても満額が振り込まれる訳ではありません。

生前給付金の取り扱いは、あくまでも「死亡保険金の6ヶ月間の前払い」です

従って、6ヶ月相当の利息分が差し引かれることになります。

また、生前給付金を請求する時点で保険料を払込継続中なのであれば、6ヶ月分の保険料相当額も差し引かれますよ。

まとめ

リビングニーズ特約による生前給付金について見てきました。

生前給付金は所得税の課税はされないですが、相続税はかかる可能性があります。

場合によっては税金面で損をすることもあるので、生前に何にいくら必要なのかをしっかりと洗い出して、必要な分だけを請求するようにしましょうね。

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