使えるの!?老人ホームに入居していた場合の小規模宅地の特例の取扱い。

投稿日
2020年05月15日
更新日
2020年05月22日
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老人ホームと小規模宅地等の関係

「父親が老人ホームに入居したまま亡くなった!生前住んでいた家に小規模宅地等の特例は適用できるの?!」

親が高齢で要介護状態になったために、自宅を離れて老人ホームに入所することがありますよね。

もし、被相続人(=亡くなった人)が老人ホームに入所している間に亡くなり、相続人が被相続人の従来住んでいた居住用不動産(空き家)を相続することになった場合、小規模宅地等の特例の適用を受ける事はできるのでしょうか?

小規模宅地等の特例は、土地の評価額を8割も下げることが出来るというとても嬉しい特例なので、適用できるかどうかは気になるところですよね・・・。

適用出来ると思っていたのにできなかった場合、当初より相続税が何百万・何千万円も増える可能性すらありますよ。

そこで、ここでは被相続人が老人ホームへ入所中に亡くなった場合に、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)が適用出来るのかどうかについて、相続税専門税理士の私が分かりやすく解説していきたいと思います。

ポイントは以下の通り。

  • 被相続人が老人ホームに入所中に亡くなっても、特例の適用は可能!
  • 被相続人が相続開始直前に要介護認定等を受けていたことが必要!
  • 老人ホームは、老人福祉法等の規定する施設であることが必要!
  • 自宅を事業に使ったり賃貸に出したりすると、特例の適用は不可!

では、一緒に見ていきましょう。

注:本文では障害支援認定を受けていた被相続人が障害者支援施設等に入所または入居していた場合には触れていません。ただし、考え方は本文で書いていることとほぼ同じなので、被相続人が障害支援認定を受けていた場合でも参考にして下さいね。

被相続人が老人ホームに入っていた場合でも小規模宅地等の特例は使える!その要件は?

相続する不動産

被相続人が生前に住んでいた自宅不動産に対して、小規模宅地等の特例(特定居住用)を適用する場合、相続した土地が「相続開始直前において、被相続人の居住の用に供されていた宅地であること」という条件を満たす必要があります租税特別措置法第69条の4第1項)

要は、「亡くなった時点で被相続人が自宅に住んでいた」という条件を満たす必要があるってことですね。

しかし、被相続人が亡くなった時点で老人ホームに入所していた場合、「相続開始直前に居住の用に供されていた」とは言えません、なんと言ったって家は空き家状態ですからね(一人暮らしだった場合)・・・。

その結果、従来は被相続人が老人ホームに入所していた場合、元々住んでいた居住用不動産について小規模宅地等の特例を適用することは原則としてできませんでした()。

しかし、老人ホームに入所するということは要介護状態等ということが前提なので、どちらかというと自宅不動産を「居住用に使っていなかった」というよりは「居住用に使うことが出来なかった」というのが正しい表現ですよね。

そこで、居住用に使いたくても使えなかった状態で、小規模宅地等の特例を形式通り当てはめて適用できなくするのは酷ということで、

平成25年度税制改正によって平成26年1月1日以降に発生した相続については、被相続人が老人ホームに入所していた場合でも小規模宅地等の特例の適用が可能となったのです。

病気等で病院に入院したまま亡くなったような場合、やむなく自宅を離れているため、生活の拠点は引き続き自宅にあると考えられるので、小規模宅地等の特例は適用可能です(参照元:「入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例|国税庁」)。老人ホームに入所中の死亡も、これと同じ扱いになったという訳ですね。

被相続人が老人ホームに入所中に亡くなった場合に、小規模宅地等の特例を適用するための条件は以下の通りです(参考:租税特別措置法施行令40条の2の2項)

  • ①被相続人が、相続開始直前において介護保険等に規定する要介護認定等を受けていたこと
  • ②被相続人が、老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居又は入所していたこと
参考:平成25年以前は、「被相続人がいつでも生活できるよう、建物の維持管理が行われていたこと」「老人ホームが、被相続人が入居するために被相続人やその親族によって所有権が取得され、もしくは終身利用権が取得されたものではないこと」といった要件もありましたが、税制改正によってこれらの要件は廃止されています。

この2つの条件を満たしていた場合、被相続人が元々住んでいた建物の敷地は、「相続開始直前に居住の用に供されていた」ものとして扱われる(=小規模宅地等の特例が適用出来る)ことになります。

入居が長期にわたるため、住民票を老人ホームに移すこともありますが、その場合でも問題なく適用可能です。

小規模宅地の特例で被相続人が老人ホームに入居していた(ケース1)

以下で、それぞれの要件について見ていきましょう。

①:要介護認定等を受けていたこととは?

まず、要件の1つ目ですが、被相続人は死亡直前の時点で要介護認定等を受けている必要があります。

あくまでも、相続開始直前に要介護認定等を受けていれば要件を満たすので、老人ホームに入居する時に認定を受けていなくても、入居後~亡くなるまでの間に認定を受けられればOKとなります(参考:国税庁「法令解釈通達69の4-7の2」)。

逆に言うと、老人ホームに入居しているけど要介護認定等を受けることなく亡くなってしまった場合には小規模宅地等の特例は適用できませんので注意です。

ここでいう要介護認定等を受けた被相続人とは、

  • ①:介護保険法19条1項の「要介護認定」を受けた被相続人
  • ②:同法2項の「要支援認定」を受けた被相続人
  • ③:その他①・②に類する被相続人(参考:租税特別措置法施行規則23の2の2項)

のことを指します。

①・②に関しては認定さえ受けていればOKなので、要介護度1~5や要支援1,2の程度は問われません。

③のその他①・②に類する被相続人とは、要介護認定等は受けていないが介護予防・生活支援サービス事業によるサービスを受けるための基本チェックリストに該当している者のことを言います(参考:介護保険法施行規則140条の62の4第2号)

②:適用要件を満たす老人ホームとは?

2つ目の要件についてですが、老人ホームであればどんなものでもいいという訳ではなく、老人福祉法等に規定される老人ホームであることが必要です。

具体的には以下のような条件が定められていますよ(参照元:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

1 老人福祉法第5条の2第6項に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム又は同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
2 介護保険法第8条第28項に規定する介護老人保健施設又は同条第29項に規定する介護医療院
3 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅(1の有料老人ホームを除きます。)

参考:要件を満たす施設としては、「 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居」「養護老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」「介護老人保健施設」「サービス付き高齢者向け住宅」「介護医療院」などがあります。

「書いていることが難しくて分からない・・・」と感じた方もいるかもしれないですが、実際のところ基本的にほぼ全ての有料老人ホームが上記のどれかに該当するので、それほど心配する必要はないですよ。

稀にですが、無許可(無認可)で営業をしている老人ホームがあります。その場合は小規模宅地等の特例を使うことはできません。届け出がされている施設かどうかは、各市区町村のホームページに一覧があるので、そちらで確認するようにしましょう(例:東京都中野区

なお、上記の要件を満たせば相続人のうち誰が取得しても小規模宅地等の特例の適用が出来る、という訳ではありません。特定居住用宅地等の適用を受けるためのその他の要件を満たしていないと適用できないことは忘れずに。

参考:特定居住用宅地等の要件とは【記事未了】

被相続人が老人ホームに入っていた場合に相続税申告時に追加で必要となる添付書類

相続税の申告書のイメージ図

被相続人が老人ホームに入所したまま亡くなった際に、小規模宅地等の特例の適用をする場合、税務署に相続税の申告が必要です。

その際、相続税の申告書を提出するだけでなく、小規模宅地等の特例の適用要件を満たすことを証明するための添付書類をセットで提出する必要があります。

具体的に必要となる書類は以下の通り。

  • 被相続人の戸籍の附票の写し
  • ②介護保険の被保険者証or要介護・要支援・障害支援区分の認定書(コピー)
  • ③施設に入所した際の契約書など、法適格施設であることの証明書(コピー)

①まず、戸籍の附票ですが、相続人ではなく、被相続人の分が必要という点がポイントですね。これは、被相続人が老人ホームに入所した後の住所の移転履歴を確認するためです。

戸籍の附票は「写し」となっていますが、これはコピーではなく役所で貰ったものをそのまま提出する必要がありますよ。原本提出です。

②次に、介護保険の被保険者証等のコピーですが、これは上で紹介した小規模宅地等の特例の適用要件の1つ目を確認するために必要です。

紛失した場合等は代わりの証明書類を市区町村が発行してくれますが、手続きが面倒なので可能な限り生前のうちにコピーをとっておくようにしましょう。

③最後に施設入所時の契約書等ですが、これは小規模宅地等の特例の適用要件の2つ目を確認するためのものです。契約書が見当たらない場合は、施設に連絡して契約書のコピー等をもらうようにしましょう。

なお、上記は被相続人が老人ホームに入所していた場合に追加で求められる書類です。
小規模宅地等の特例を受けるために必要な添付書類は他にもあるので、下記記事を参考に用意してくださいね。

小規模宅地等の特例を利用する時に必要な添付書類をパターン別に紹介

【要注意】こんな場合、小規模宅地等の特例は使えるの?ケース別に解説します!

被相続人が老人ホームに入所中に亡くなった場合でも、要件を満たせば小規模宅地等の特例の適用をすることが出来るということが分かりました。

ここからは、ケース別に「こんな場合は特例が使えるの?」という疑問に答えていこうと思います。

老人ホームに入所後、賃貸など別の目的で自宅不動産を使っている場合

上で紹介した条件を満たす場合、被相続人が老人ホームに入所する前に住んでいた建物の敷地に対して小規模宅地等の特例の適用が可能です。

ただし、被相続人が老人ホーム入所後、空き家を以下のような用途に使用してしまうと、もはや「相続開始直前に被相続人が居住の用に供していた宅地」とは認められないので注意が必要です租税特別措置法施行令第40条の2第3項)

  • ①店舗として事業を開始した
  • ②貸家として有償で貸付をした
  • ③別居中だった生計別の親族が無償で住むことになった(生計同一親族が無償で住む場合は問題なし)

中には「空き家になっているのはもったいない!」ということで、安易に貸付してしまう人もいますが、慎重に検討しましょうね。

被相続人が老人ホームに入っている場合に小規模宅地等の特例を使えなくなるケース

なお、空き家を貸付事業に供した場合、特定居住用宅地としては小規模宅地等の特例を使えませんが、貸付事業用宅地としては特例の利用が可能になります。

ただ、貸付事業用宅地の減額率は50%(かつ限度面積200㎡)となっており、減額率80%(かつ限度面積330㎡)の特定居住用宅地等と比べると節税の恩恵が少なくなるので注意が必要です。

老人ホームに入所し、要介護認定等の申請中に相続が発生した場合

基本的に、老人ホームに入所するには「要介護認定等がされていること」という要件を満たさなければなりません。

しかし、要介護認定等は市区町村に申請をしてから実際に認定されるまで1ヶ月弱かかるので、要介護認定等の申請中でも老人ホームへの入所は出来るようになっています。

では、万が一要介護認定等の申請中に被相続人が亡くなってしまった場合、小規模宅地等の特例は使えるのでしょうか?

この点、上でも紹介しましたが、要介護認定等を受けていたかどうかは、被相続人が相続開始直前に要介護認定等を受けていたかどうかで判断されます。

そして、申請後実際に市区町村等から要介護の認定がおりた場合は、その効力は申請日まで遡って有効となることとされています(参考:介護保険法27条8項、32条7項)

従って、仮に被相続人が亡くなった時点で要介護認定等の申請中でも、その後で市区町村が認定した場合は、被相続人は相続開始の直前において要介護認定を受けていた者に該当することになるので小規模宅地等の特例は受ける事が可能です。

申請の結果、要介護認定が非該当となった場合、小規模宅地等の特例は適用できないですし、仮入所期間中のサービスの費用は全額が自己負担となります。

夫婦で老人ホームに入所していた場合

仲のいい老夫婦

夫婦は一般的に同じくらいの年齢であることが多いので、一方が要介護状態で老人ホーム等に入所する場合、配偶者も一緒に老人ホーム等に入所することがあります。

では、例えば夫婦と子供(長男)という家族で老人ホームに入所している夫が亡くなった場合、小規模宅地の特例の適用はどうなるでしょうか?

・夫(甲)←元々の宅地所有者
・妻(乙)←夫(甲)と同居
・長男(丙)←甲・乙と同居

時系列のイメージはこんな感じです。

老人ホームに入居した場合の小規模宅地の特例時系列

この点、夫が亡くなった場合に夫名義の自宅不動産を妻が相続するのであれば、自宅の敷地は小規模宅地等の特例の適用対象となるので、妻は特例の適用が可能です。

参考:配偶者には、「その不動産に住んでいた」というような居住要件はありません。居住用宅地を相続すれば、それで特例の適用が可能です。

次に、老人ホームに入っていた妻が、そのまま老人ホームから自宅へ戻ること無く亡くなった場合はどうなるでしょうか?自宅不動産は長男が相続することになりますが、居住の用に供していた不動産といえるのでしょうか?

結論としては「長男(丙)」も小規模宅地等の特例の利用が可能です。

小規模宅地等の特例は、被相続人の居住の用に供していた宅地等がその特例の対象となりますが、夫(甲)の死亡後、妻(乙)は自宅に戻っていません。

であるならば、妻(乙)の「居住の用に供していた」とは言えず、小規模宅地等の特例を適用できないようにも思えます。

しかし、老人ホームに入っている場合の一定の要件は、乙(妻)が老人ホームに入居して居住の用に供されなくなった直前の状況で判定することとなっており、その時において妻(乙)が宅地等を所有していたか否かについての、法令上の規定は特段ありません。

従って、妻(乙)死亡後に、長男が自宅不動産を相続する場合は、小規模宅地等の特例を受けるためのその他の条件を満たしている限り、特例の適用が可能となりますよ。

なお、上では「夫(甲)→妻(乙)→長男(丙)」の順で相続する例を取り上げましたが、夫(甲)が亡くなったときに妻(乙)をスルーして長男(丙)が相続するケースでも、同居の親族に該当するので問題なく特例の利用が可能です。

2世帯住宅に住んでいた被相続人が老人ホームに入所していた場合でも、要件を満たせば特例の適用可能ですよ。

参考:老人ホームに入居中に自宅を相続した場合の小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法第69条の4)の適用について|国税庁

最後に

被相続人が最期を迎えたのが老人ホームだったとしても、小規模宅地等の特例の適用を受けることは可能です。

亡くなった時点で自宅に住んでいなかったからと言って、特例の適用を諦める必要はないですよ!

なお、小規模宅地等の特例は「相続税申告」をしなければ適用を受けられません。
特例を適用したら税額ゼロになるから申告しなくて良いんでしょ?と考える人がいらっしゃいますが、そうではないので注意が必要です。

参考:相続税がゼロなら申告不要?実はゼロ円でも申告義務がある場合もある!

小規模宅地等の特例については、適用の判断で迷うこともあるでしょうから、その場合はすぐに税務署や相続税専門の税理士に相談することをオススメします。

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