【生前に実施】遺留分の放棄とは?手続き方法や絶対に知っておきたい注意点も併せて解説!

投稿日
2020年03月04日
更新日
2020年03月10日
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遺留分放棄のイロハを考える女性

「息子に全ての財産を相続させようと考えているから、他の相続人に遺留分の放棄をさせたい。どうすればいいの?」

「遺留分の放棄には裁判所の許可がいるみたいだけど、許可は簡単におりるの?」

こんにちは。相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

自分が亡くなった後、誰に財産を相続させるかで悩む方は多いですよね。特定の相続人に全ての財産を相続させたいけど、ここには遺留分という壁が立ちはだかります。

だからといって、相続させたくない人に相続されるのは嫌ですよね・・・。

そこで、役に立つのが「遺留分の放棄」です。遺留分の放棄をうまく活用すれば、被相続人の思った通りの相続が実現できるかもしれませんよ。

では、この遺留分の放棄とは一体何なのでしょうか?どのようにして遺留分の放棄をすればいいのでしょうか?

ここでは、遺留分の放棄について分かりやすく解説していきますね。

ポイントは以下の通り。

  • 遺留分の放棄は「遺留分を侵害されても文句を言わない」ということ!
  • 相続発生前に放棄するには、家庭裁判所の許可が必要!
  • 家庭裁判所の許可は、一定の基準を満たす必要あり!
  • 相続発生後の遺留分放棄手続きには、特に決まりなし!

では、一緒に見ていきましょう。

遺留分の放棄とは?

遺留分の放棄が何なのかを見る前に、「遺留分」について簡単に説明をしますね。

最近は、遺言書を書く方が増えて来ているようです。遺言書を残せば、自分の思ったように財産を引き継いでもらうことが出来るので、遺産分割協議での無駄な争いを避けることが出来るからでしょうね。

しかし、この遺言書が逆に相続トラブルを招くことがあるのです。その理由が遺留分にあります。

遺言書

遺留分とは、「相続人に保障された最低限の相続分」のことです。

上で書いたように、遺産は被相続人(=亡くなった人)が遺言書を書けば、誰にでもどのような配分でも譲ることが出来ます。

しかし、相続人からすると、相続が発生したら自分が財産を貰えると期待していますよね。それに、受け取るであろう財産は、きっと今後の生活にも必要なものです。

それなのに、蓋を開けてみたら「自分の相続分はゼロだった」なんて事になると、愕然としてしまいますよね・・・。

そこで、もし遺言書によって特定の人に全財産を譲るなど、自分が財産を十分にもらえなくなったようなケースのために、「遺留分によって最低限の相続分を保障しよう」という訳ですね。

従って、遺言によっても遺留分を奪うことは認められていません。

各相続人に認められた遺留分は、被相続人との関係や相続人の状況によって、以下のように異なります。

遺留分の割合

遺留分とは?遺留分の内容を分かりやすく解説!知らないと「損」をするかも!?


遺留分の概略について理解出来ましたか?

では、本題である「遺留分の放棄」とは何なのか、について見ていきましょう。

これは、読んで字のごとくですが、「遺留分を放棄する」ことです。

遺留分は法律によって保障された、最低限の相続分ですよね。
従って、遺留分を放棄するということは、「自分に与えられた最低限の相続分を放棄する」という事です。

つまり、仮に自分が遺留分を下回る財産しかもらえなかったり、取り分がゼロだったとしても文句は言いませんよ(遺留分侵害額請求権は行使しませんよ)、という意味ですね。

家族によっては、被相続人が特定の相続人予定者(推定相続人)に対して全ての財産を相続させたい、と考えているケースもあるでしょう。

そういったケースで遺留分侵害額請求権を行使できる余地があると、意向通りの相続が実現できないですからね。

そこで、法律上、与えられた権利を放棄することも認めているという訳です。

参考:遺留分を放棄すると、相続予定者(推定相続人)の代襲相続人も遺留分減殺請求権の行使ができなくなります。

遺留分の放棄をすると、被相続人が自由に処分出来る財産は増えますが、放棄したからといって、他の相続人の遺留分が増えるといったことはありません民法1049条2項)

遺留分の放棄と相続放棄の違い~両者は全然違います~

「遺留分の放棄についてはなんとなく分かったけど、相続放棄と何が違うの?」と思った方もいるでしょう。

実はこの2つは全然違います。

遺留分放棄と相続放棄

相続放棄は、「被相続人の資産はもちろん負債も含めて一切を引き継がない」というものです。

一方、遺留分の放棄は、「遺産を少ししか貰えない若しくはゼロだったとしても文句は言いません」というものです。

積極的に「相続しない!」と主張するのか、消極的に「相続しなくていいです!」と主張するかの違いですね。

また、他にも以下のような違いもありますよ。

項目遺留分の放棄相続放棄
放棄の対象遺留分のみ相続すること自体
相続人の地位そのまま失う
債務の相続ありなし
遺産分割協議への参加遺産分割が必要な場合は要参加参加できない
遺留分なくなるなくなる
他の相続人への影響なしなし
生前の放棄の可否可能不可能
手続きの時期生前から可能相続発生後3ヶ月以内
手続き場所生前:家庭裁判所
死後:どこでも(意思表示のみ)
家庭裁判所

「遺留分に束縛されない」のが被相続人にとって遺留分放棄をしてもらうメリット!

納得する女性

遺留分の放棄が何を意味するのかについて書きましたが、遺留分の放棄をしてもらう事で得られるメリットにはどういうものがあるのでしょうか?

この点、上で書いたように、被相続人は相続人の遺留分を無視した遺言書を書くことは出来ません(書くこと自体は可能だけど、後で遺留分侵害額請求権を行使される恐れがある)。

しかし、特定の相続人が遺留分の放棄をすると、被相続人はその相続人の遺留分を気にせずに自由な財産分配をすることが出来ます。

つまり、遺留分の放棄には「遺留分の束縛から解放される」というメリットがあるのです。

相続人にそこまでのメリットは無い?

一方で相続人にメリットは有るかと言うと、そこまでのメリットはありません。手続きも面倒ですしね。

ただ、相続発生後にしか出来ない相続放棄と違って、遺留分の放棄は相続発生前でも出来ます。

相続争いに巻き込まれたくないと考えている相続人は、前もって遺留分の放棄をしておくことで、「私は相続には関係ありません!」とアピールすることは可能かもしれません。

遺留分の放棄をする際の注意点

上で書いたように、遺留分の放棄をする事で、被相続人が遺留分に束縛されない自由な財産の分配が実現出来ます。

しかし、遺留分の放棄にはいくつかの注意点がありますので、遺留分放棄をさせたい方はもちろんのこと、遺留分の放棄を求められている方もしっかりとチェックしておいてください。

【放棄をする人の注意点】遺留分を放棄しただけでは債務の相続をしてしまうかも!

残った借金

遺留分の放棄は、あくまでも「遺留分を侵害されたとしても文句を言いません」というだけのものです。

従って、相続人である事に変わりはなく、相続権は失いません。

その結果、万が一、被相続人が多額の借金等を残して亡くなった場合は、遺留分の放棄をしただけだと借金を相続してしまう事になります。

従って、借金があるかもしれない場合は、遺留分の放棄をして安心してしまうのではなく、相続放棄も検討した方が良いでしょう。

【放棄してもらう人向け】遺留分の放棄をしても、遺言書がなければ意味がない!

遺言書

相続人が遺留分の放棄をすれば、被相続人は遺留分を気にせずに好きなように財産を振り分けることが出来ます。

しかし、これは遺言書をしっかりと残しておくことが前提です。
遺言書が無ければ、相続人は遺産分割協議によって、誰が何をどれだけ相続するのかについて話し合わなければなりません。

上でも書いたように、遺留分の放棄をしても相続権は失いません。
従って、遺言書がない場合は、遺留分を放棄した相続人も遺産分割協議に参加する必要があるのです。

「相続争いに巻き込まれたくないから」という理由で遺留分の放棄をした相続人だった場合、結局遺産分割協議に参加しないといけないのであれば、意味がないですよね。

また、他の相続人の立場からすると、遺留分の放棄をした相続人が「やっぱり自分も相続をしたい!」と主張してくる恐れがあるので、落ち着かないでしょう。

遺留分放棄は、遺言によって遺留分が侵害されて初めて意味があるものです。遺言がなかったり、無効になったりすると全く意味がありません。

遺留分の放棄を相続人にしてもらう場合は、必ず遺言書を残すようにしましょうね。

せっかく遺言書を残しても、形式不備などで無効になってしまっては意味がありません。遺言書を作る際には公正証書遺言をオススメします。

なお、弊社では税金的な面も踏まえた遺言書作成サポートを行っています。詳細は「遺言書作成サポートサービス」のページを御覧ください。

【全般的】未成年が遺留分の放棄をするのは難しいかも!?

未成年者

未成年でも遺留分の放棄は可能なのですが、未成年は一人で遺留分放棄の申立をすることは出来ません。

そこで、通常は親権者が法定代理人として代わりに遺留分放棄の申立をする事になります。

しかし、未成年や親権者の意思に反した遺留分の放棄は家庭裁判所が認めてくれません。

愛人や前妻の子などが相続人となる場合、遺留分の放棄をしてもらいたいと思う被相続人も多いでしょうが、遺留分を放棄する相当の理由がない限り、裁判所は認めてくれないと思っておいた方が良いでしょう。

未成年に遺留分放棄をしてもらうには、後述する「代償の支払い」が必要になるケースが多いようです。

遺留分の放棄をする(させる)にはどうすればいい?

遺留分の放棄をするにはどのような手続きをすればいいのでしょうか?

この点、遺留分の放棄は相続開始にするのか相続開始にするのかによって手続きが異なります。

以下では、【相続開始前】と【相続開始後】に分けて、遺留分を放棄する際の手続きや費用等について見ていきましょう。

【相続開始前】生前に遺留分の放棄をする場合の手続き

家庭裁判所での申立

被相続人が存命中の場合、遺留分の放棄をするには、家庭裁判所に申立をして許可をもらう必要があります民法1049条)

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けた時に限り、その効力を生ずる。

当事者間で勝手に合意して契約書を結んだり念書を書いたとしても、法律上の効果はないので要注意です。

なぜ裁判所の許可が必要なのかというと、遺留分の放棄を自由に認めてしまうと、被相続人や他の相続人から遺留分の放棄を強制される相続人が出てくる可能性が高いからですね。

遺留分の放棄は、あくまでも相続予定者本人の意思で行われないといけないのです。その意思を確認するために、家庭裁判所による許可制としているという訳ですね。

遺留分の放棄が生前に認められるようになったのは、「子が複数いる場合に、均等に農地を相続してしまうと農地の持分割合が細分化されてしまうため、後継者以外の子に放棄させたい」、というニーズがあったからです。

以下では、相続発生前に遺留分の放棄をする際に必要となる書類や費用などについて見てきましょう。

申立人

遺留分放棄の申立が出来るのは遺留分のある相続人です。

従って、遺留分が元々ない被相続人の兄弟姉妹は、遺留分の放棄をすることは出来ません。

兄弟姉妹に財産を相続させたくない場合は、兄弟姉妹の取り分をゼロにすればOKです。

申立の時期

遺留分の放棄の申立は「相続が開始する」に、家庭裁判所に対してする必要があります。

申立先

遺留分放棄の申立は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。

必要書類

遺留分の申立には、以下の書類が必要です。

  • 申立書(記載例
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本

参考:必要に応じて別途追加の書類が必要になることもあります。

申立費用

申立時には、以下の費用が必要です。

  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なります)

裁判所での面談

遺留分放棄の申立書が受理されると、後日、裁判所で面談(審問)が行われます。その際には、主に家族や財産の状況、遺留分を放棄する理由などについて質問されるでしょう。

そして、面談が終わると裁判所の審議を経て、最終的な結論が申立人本人に通知されます。

申請をすれば遺留分放棄の証明書を発行してもらえるので、必ず申請して相続人の間で共有するようにしましょう。

遺留分は、必ずしも全てを放棄しなければならないというわけではなく、家庭裁判所が許可を出せば遺留分の一部だけを放棄することも可能なようですよ。

【相続開始後】遺留分の放棄をする場合の手続き

相続発生に遺留分の放棄をする場合、特に手続きの方法は定められていません

従って、「私は遺留分を放棄します!」と意思表示すればそれでOKですよ。

そもそも遺留分の放棄は、「遺留分を侵害された際に遺留分減殺請求権を行使しません!」というものです。

なので、遺留分減殺請求権の時効である1年間放っておけば、別に何もしなくても遺留分を放棄したのと同様の結果となります。

ただし、どうしても心配なようでしたら、他の相続人に「私は遺留分を放棄します」といった内容の内容証明郵便を送ったり、他の相続人との間で「遺留分放棄に関する合意書」を作成しておくといいでしょう。
 

遺言書の付言事項として、遺留分の放棄を促すことは可能ですが、法的な拘束力はないので遺言通りに放棄をしてくれるとは限りません。

遺留分放棄の許可は必ず出る?裁判所の基準は?

審査の結果

生前に遺留分の放棄をするには、家庭裁判所の許可が必要ですが、この許可は申立をすれば必ず出るのでしょうか?

裁判所は一体どのような基準で許可を出しているのでしょうか。

この点、裁判所は以下の基準で遺留分の放棄を許可するかどうかの判断をしています。

  • 遺留分の放棄が自由な意思に基づくものであること
  • 遺留分の放棄をするに合理的な理由があること
  • 遺留分の放棄に対する代償が支払われていること

1つずつ内容を見ていきましょう。

遺留分の放棄の申立は全国で毎年1,000件程度行われており、平成30年度は890件の許可が出ています(参照元:家事平成30年度 4家事調停事件の受理,既済,未済手続別事件別件数  全家庭裁判所 | 司法統計 |裁判所

遺留分の放棄が自由な意思に基づくものであること

遺留分は、そもそも相続人の利益を守るためにできた制度です。

従って、被相続人や他の相続人等によって無理やり放棄させられるものであってはなりません。あくまでも、自分の意思によって放棄される必要があるのです。

しかし、裁判所が自分の意思で遺留分の放棄をしているのかについて、客観的に判断するのはなかなか難しいですよね・・・。

そこで、他の二つの基準によって判断することとしています。

遺留分の放棄をするに合理的な理由があること

相続人は自分の意思で遺留分の放棄をする必要があります。

しかし、仮に自分の意思だったとしても、放棄をする理由が不合理なものだったり、そもそも放棄をする必要性のないものだった場合は裁判所は遺留分の放棄を認めてくれません。

従って、遺留分の放棄をするには、それなりの合理的な理由が必要となります。

合理的な理由とは、例えば以下のようなものですね。

  • 遠方に住んでいて被相続人とは疎遠だし、相続争いに巻き込まれたくない。
  • 生前に十分な援助を受けたし、財産は被相続人が経営していた会社の株式がメインなので、長男に継がせてあげたい。

遺留分の放棄に対する代償が支払われていること

遺留分の放棄が、自分の意思に基づいており、合理的な理由があったとしても、放棄をする人がなんらの見返りもなく自分の権利を手放そうとしている場合は、裁判所の許可が出ません。

放っておけば、最低限の相続財産がもらえるのに、敢えてその権利を放棄するのだから、それなりの不動産や現預金等を生前にもらっていてしかるべき、と裁判所は考えているからです。

代償

従って、遺留分の放棄をする場合、放棄した遺留分に相当する財産を予め被相続人からもらっていることが、基本的には必要となります。

実際に遺留分の放棄の許可が出た例・却下された例

事例の紹介

裁判所は、遺留分の放棄に関する申立があった際にどのような基準で判断しているか、について紹介しました。

最後に、実際に放棄が認められた例と却下された例をいくつか見ていきましょう。

まずは、遺留分の放棄が認められた例。

・被相続人が亡くなった後の相続争いを防ぐために、愛人との間に出来た子に遺留分を放棄してもらった例
・介護の必要な親のために、親と同居している子以外に遺留分を放棄してもらった例

次に、不許可になったケース。基本的には滅多に起こらないのですが、以下のように不許可となってしまうケースもあります。

・単に今後の生活に不安がないという理由で遺留分を放棄しようとした例(東京家裁昭和35年10月4日審判)
・遺留分権利者に5年後に3万円贈与するという約束し、遺留分の放棄をさせようとした例(神戸家裁昭和40年10月26日審判)
・結婚を許可する代わりに子に遺留分の放棄をさせようとした例(和歌山家裁妙寺支部昭和63年10月7日審判)
遺留分の放棄は、家族円満ならそもそも不要です。一方で、確実に揉めそうな家族の場合は裁判所は許可を出してくれません。
従って、「家族の仲は最高に良好というわけではないけど、申立を却下するほどこじれてはいない」という、微妙な状態で認められると思っておくといいでしょう。

遺留分の放棄を撤回することは出来る?

遺留分の放棄が家庭裁判所で許可された後で、撤回することは出来るのでしょうか?

答えは「出来る」です。ただし、撤回のハードルはかなり高いと思っておいた方がいいでしょう。

一度許可された遺留分の放棄を撤回したい場合は、家庭裁判所に対して取り消しの申立をする事になります家事事件手続法第78条)

とはいっても、もともと家庭裁判所は許可をした後で撤回してくる可能性なども考慮した上で結論を出しています。

従って、単に気が変わったというだけでは、撤回は認められません。家庭の事情が変化し、遺留分放棄をしたままでいることが不合理となったなど、撤回する合理的な理由が必須でしょう。

参考:相続開始後は遺留分放棄の撤回は出来ないものとされています。

最後に

遺留分の放棄について解説をしてきました。

遺留分の放棄は、相続人に保障された最低限の相続分を自ら手放すものです。

放棄をする際は、本当に必要なのかを今一度考えてから申立をするようにしてくださいね。一度放棄してしまうと、基本的には後になって撤回することが出来ないですよ。

また、遺留分の放棄はそもそもの申立件数も年間1,000件程度と少ないです。
遺留分の放棄を行う際は相続に強い弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

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