準確定申告で使える医療費控除の範囲は?相続税の債務控除との関係もあわせて解説!

投稿日
2020年05月19日
更新日
2020年05月22日
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準確定申告における医療費控除

「夫が死ぬ前に医療費が結構かかっていた!準確定申告で医療費控除はどこまで使えるの?」

こんにちは、相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

亡くなった方が死亡する年に入院や治療等していた場合、結構な額の医療費が発生しますよね。一年間の医療費が高かった人が使える「医療費控除」を知っている方は、ここで疑問に思うでしょう。

「この医療費は亡くなった人の準確定申告時に医療費控除として使えるの?」、「使えるとしたらいつからいつまでの分が使えるの?」と。

そこで、ここでは準確定申告時に受けられる医療費控除の範囲について、相続税専門の税理士である私が分かりやすく解説していこうと思います。

ポイントは以下の通り。

  • 被相続人の死亡日までに支払った医療費が準確定申告の医療費控除の対象!
  • 死亡日より後に払った医療費は、相続税計算時の債務控除!
  • 生計同一親族が払った死亡後の医療費は、払った人の医療費控除としても使用可能!
  • 死亡診断書の費用は医療費控除の対象外!(相続税では控除可能)

では、いっしょに見ていきましょう。

【簡単におさらい】医療費控除とは?

医療費控除

所得税の計算では、基本的に「収入-経費=所得」として課税対象となる所得を算出するのですが、そこで計算した所得に税率を掛けるのではなく、所得金額から社会保険料控除や生命保険料控除などといった「所得控除」を差し引いた金額に対して税率をかけます。

医療費控除もこの所得控除の一種です。

1月1日から12月31日までの間に、納税者自身や生計同一親族のために支払った医療費の額が10万円を超えた場合、超えた分について医療費控除として所得から差し引くことが出来ますよ所得税法第73条

実際に支払った医療費の合計額-保険金等で補填される額-10万円(

:その年の総所得金額等が200万円未満の方は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を利用します。

例えば、年間30万円の医療費を払った場合(補填なし・所得200万円以上)、医療費控除の金額は20万円という訳ですね。

なお、その年中に実際に支払われた金額が対象となるので、未払いとなっている医療費については医療費控除の対象外となります所得税法基本通達73―2

また、生計同一の親族にかかる医療費であれば、親族の誰が所得控除項目として利用するかは実務的には問われません。

医療費控除は年末調整で受けることは出来ないので、各人が確定申告をする必要があります。

【簡単におさらい2】準確定申告とは?

毎年、1月1日から12月31日までの1年間に課税所得の生じた方は、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をして、所得税の納付をしなければなりません(参照元:申告と納税|国税庁

しかし、年の途中で亡くなった方は確定申告をすることが出来ないですよね。そこで、亡くなった方が1月1日から死亡するまでの間に得た所得について、相続人は死亡日から4ヶ月以内に確定申告と所得税の納付をすることになります。

これが準確定申告ですね。

準確定申告の期限

最終的に税額はゼロだけど給与や年金から源泉徴収をされている、という場合は、確定申告をすることで還付を受けることが出来ますよ。

なお、準確定申告によって所得税を納付した場合は、納付額が相続税計算時の債務控除、還付となった場合は還付額が相続財産となりますよ。

死亡した人の所得を確定させる「準確定申告」とは?手続き期限や方法を解説。【記事未了】

準確定申告時の医療費控除のポイント

ポイントを示すノート

ここでは、準確定申告時の医療費控除のポイントについて、順番に見ていきましょう。

準確定申告時の医療費控除になるかどうかは、死亡前(死亡日当日を含)に払った医療費かどうかで決まる!

亡くなった方の医療費が準確定申告時に医療費控除として認められるかどうかは、「いつ支払った医療費なのか」によります。

死亡日当日を含む死亡の日までに支払った医療費であれば準確定申告の医療費控除の対象となりますが、死亡日より後に支払ったのであればそれは準確定申告の医療費控除としては認められません。

死亡後に被相続人が支払うことは出来ないので、当然といえば当然ですね。

死亡後に相続人が支払った医療費は、相続税申告時の債務控除の対象となります。

図解すると下のような感じとなります。

医療費の支払日による医療費控除と債務控除の違い

死亡直前の入院費などは、故人が亡くなってから相続人が支払をするケースが多いですが、この場合は準確定申告時の医療費控除としては使えない、ということですね。

なお、死亡日当日に支払った医療費は準確定申告の医療費控除に利用可能です。
たとえば、死亡日当日に代金を精算したのであれば、被相続人が何時に死亡したか否かに関わらず準確定申告の医療費控除として利用可能ということです。(参考:所得税法基本通達124・125-4)

誰が医療費を負担したのかも重要なポイント!

医療費の支払い

上で、医療費を支払ったのが死亡前か後かで医療費の取扱が異なると書きました。

ここで、もう一つ重要なポイントがあります。

それは、「誰が医療費を負担したのか」という点です。

被相続人が生前に自分で負担していた医療費については、当然自分の準確定申告時に医療費控除が受けられます。

しかし、被相続人の医療費を親族が代わりに支払うということがありますよね。

この場合、医療費控除はどうなるのでしょうか?

誰が医療費を負担したか

この点、被相続人と生計が同一だった親族が医療費を負担したのであれば、支払った人が自分の確定申告の際に医療費控除として使う事もできるのです!(参考:所得税法基本通達73-1

死亡直前の医療費については結構高額になるケースが多いので、同一生計の親族が支払をした場合は忘れずに医療費控除を受けたいですね。

一方で、生計が同一でない親族が医療費を負担した場合は、誰も医療費控除を受けることが出来ないという点も覚えておきましょうね。

生計が同一の場合は、被相続人の準確定申告か相続人の確定申告かどちらか有利な方で医療費控除を受けることが出来る、ということですね。

高額医療費の対象となった場合は医療費から差し引くのを忘れずに!

毎月の医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた部分について、後日申請すれば高額療養費として還付を受ける事ができます(参照元:高額療養費制度を利用される皆さまへ |厚生労働省

この高額医療費については、医療費に補填されるものなので、医療費控除の計算の際には差し引く必要がありますよ。

例えば、支払った医療費が年間30万円で、高額医療費として返ってきたお金が5万円だった場合、医療費控除の金額は15万円(=30万円―5万円―10万円)ですね。

被相続人の死亡後に相続人に支払われた高額療養費の還付金は、「その他の相続財産」として相続税の課税対象となります。遺言がない場合や遺言内で指定がない場合は、高額医療費も遺産分割協議の対象です。

よくある医療費毎に、準確定申告時の医療費控除の可否を検討!

いざ準確定申告で医療費控除を受けようと思っても、「何が医療費控除の対象になるのか分からない!」、ということもあるでしょう。

そこで、ここでは高齢者によくある医療費の項目毎に、医療費控除の対象になるのかどうかを解説していきますね。

死亡診断書代は✕

人が死ぬと役所に死亡届を提出しなければならないのですが、提出の際に添付資料として死亡診断書(もしくは死体検案書)が必要となります。

しかし、死亡診断書は死亡後に発生する費用なので医療費控除の対象ではありません。

病院に入院したまま亡くなった場合、死亡診断書の費用は最後の入院費用に含まれていることが多いですが、忘れずに請求書から死亡診断書の額を差し引くようにしましょうね。

死亡診断書は相続税を計算する際の葬式費用として、相続財産から差し引くことが出来ます。

寝たきりの老人が使うおむつの費用は○

高齢になるとおむつを使うことがありますが、通常のおむつ代は医療費控除の対象にはなりません。

ただし、おおむね6ヶ月以上にわたって寝たきりの状態であり、医師が治療のために必要と判断した場合は、おむつ代が医療費控除の対象となりますよ(参照元:寝たきりの者のおむつ代|国税庁

医療費控除を受けるには、医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要となります。

介護用用品の購入費用やレンタル代は✕

福祉用具

介護にはベッドや福祉用具など、様々なものが必要となりますが、介護のために購入orレンタルした福祉用具や介護予防福祉用具の費用については、医療費控除の対象とはなりません。

介護保険制度下で払う居宅サービスは○

介護サービス事業者から受けるサービスのうち、療養上の世話の対価部分については医療費控除の対象となります(参照元:No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービスの対価|国税庁

具体的には、例えば以下のようなものが医療費控除の対象です。

  • 通所リハビリテーション
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • デイサービス
  • ショートステイ
サービス事業者が発行する領収書には、医療費控除の対象になる医療費の金額が記載されている必要があるので、確認を忘れずに!

参考:指定介護老人福祉施設及び指定地域密着型介護老人福祉施設については、1/2相当額が医療費控除の対象です。

温泉利用型健康増進施設の利用料金は○

温泉で治療

温泉は健康にいいと言われていることから、高齢者の中には毎日温泉に通っている方もいるでしょう。

残念ながら、自分の判断で温泉に通っている場合は、その費用は医療費控除の対象になりません。

ただし、医師が治療のために必要と認めて、厚生労働大臣の認定した温泉利用型健康増進施設で温泉療養を行った場合、その費用は医療費控除の対象となります(参照元:温泉利用型健康増進施設の利用料金の医療費控除の取扱いについて(情報)|国税庁

全国規模の施設としては、クアハウスがありますね(クアハウスの全てが対象施設というわけではありません、詳しくは温泉利用型健康増進施設連絡会を参照してください)。

医療費控除を受ける際には、以下の書類が必要なので忘れずに。

  • 温泉療法医等の証明書(温泉療養証明書)
  • 温泉施設の領収書

有料老人ホームの費用は✕

有料老人ホームの利用料については、医療費控除の対象ではありません。

医療費控除の対象となるのは、以下の施設に該当する場合です。

  • 指定介護老人福祉施設
  • 指定地域密着型介護老人福祉施設
  • 介護老人保護施設
  • 指定介護療養型医療施設

対象になる施設なのか・ならない施設なのか内容を確認しましょう。

【参考】医療費の相続税計算上の取扱い

参考までに支払った医療費が相続税の計算上どのように処理されるのかをまとめておきます。

支払った医療費の相続税における取り扱い

*1 被相続人と相続人で精算が終わっていない場合で両者間で精算の取り決めがある場合には債務控除として利用可能。ただし、扶養親族間で当然負担すべきものであれば不可。

まず、被相続人本人が死亡前に支払った医療費は、単純に被相続人本人の現預金の減少として反映されます。被相続人本人が死亡後に医療費を払うことは不可能なので、相続税の計算上考慮することはありません。

一方、相続人が支払った死亡日前の医療費に関して、精算するのが前提であれば「相続人に対する被相続人の債務」として債務控除の適用が可能となります。

そして、死亡後に相続人が支払った病院への未払医療費に関しては、それが相続財産から支払われたものであっても「病院に対する債務」として債務控除の利用が可能ですよ。

最後に~医療費の取扱いのまとめ表あり~

準確定申告時の医療費控除について、対象となる支払時期や内容を見てきました。

基本的なポイントは、被相続人が亡くなる前の医療費は準確定申告で、亡くなった後の医療費は相続税の債務控除で使うということですね。

最後に、医療費の取扱について相続開始前と後でまとめたものを載せておきますね。

医療費の所得税及び相続税における取扱い

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