遺産分割協議のやり直しは可能!ただし注意点あり。

投稿日
2020年01月13日
更新日
2020年01月13日
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遺産分割協議のやり直し

「遺産分割協議が終わってから考えが変わった!最初からやり直すことって出来るの?」

こんにちは。相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

相続が発生した際に、一度相続人全員で話し合って遺産分割協議をした後で、「やっぱり相談した結果、土地の相続は長女ではなく長男がしたい!」といったようなケースは結構有ります。

遺産分割協議が成立した後で、再度やり直すことは果たして出来るのでしょうか?

結論から言うと、やり直しは可能です。ただし、条件や税務上の注意点があります。

注意点を知らずにやり直しをしてしまうと、余分な税金が発生してしまう事もありますので、やり直しをするのであれば、今回の記事でポイントをしっかりと把握してからやるようにして下さいね。

最初に記事の要点をまとめておくと、以下の通りとなります。

  • 相続人全員の合意があれば遺産相続のやり直しは出来る!
  • 遺産分割協議時に詐欺や脅迫があった場合はやり直し可能!
  • 遺産分割を調停・審判でした場合はよほどの事情がない限りやり直しは不可能!
  • 遺産相続のやり直しをすると贈与税等が課税される可能性あり!

では、一緒に詳しく見ていきましょう。

遺産相続(遺産分割協議)のやり直しはできる?

遺産分割協議書の表紙

相続が発生すると、被相続人(=亡くなった人)が遺言を残していない場合は、相続人全員で遺産を誰が相続するのかを決めなければなりません。

これを遺産分割協議といい、協議の結果、相続人全員で作成した遺産分割協議書が無いと、金融機関や法務局等での相続手続きができません。

参考:遺産分割の方法には、協議の他にも遺言・調停・審判があります。

しかし、中には一度決めた分割内容を後になって何かしらの事情によって変更したくなることもあるでしょう。

この点、一度成立した遺産分割協議については、原則として後でやり直すことはできません。

なぜなら、相続人が全員で話し合った結果、遺産分割協議書を作成し全員で署名捺印をしたことで、遺産分割協議は終了しているからです。

ただし、以下のように例外的に遺産分割協議のやり直しが出来るケースもあります。

  • ①遺産分割協議がそもそも無効のケース
  • ②遺産分割協議は有効だが、相続人全員の合意があるケース

以下で1つずつ見ていきましょう。

①遺産分割協議が無効のケース

遺産分割のイメージ

遺産分割協議は、相続人全員の合意によって成立するのですが、中には以下のように遺産分割協議自体が無効となったり追加で遺産分割協議が必要となるケースがあります。

  • A.相続人の一部が欠けたり相続人以外の者が参加した遺産分割
  • B.詐欺や脅迫によって遺産分割が行われた場合
  • C.遺産分割後に新たな財産が見つかった場合

ケース別に補足していきますね。

A.相続人の一部が欠けたり相続人以外の者が参加した遺産分割

まず、相続人の一部が欠けたり相続人以外の者が参加した遺産分割は無効となります。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるので一人でも欠けたら無効です。
また、遺産分割協議には相続人しか参加することができないので、相続人でない人が遺産分割協議に参加して行われた分割協議は効力がありません。

相続人以外の人が参加する状況なんてなかなか想像つかないと思いますが、これは主に以下のようなケースが該当しますよ。

【遺産分割の時点で既に相続人ではなかったケース】

・戸籍に誤りがあり、相続人でないのに相続人となっていた。
・相続人の行方が分からず不在者財産管理人を選任していたが、そもそも以前から亡くなっていた。

【遺産分割の後で相続の資格を失ったケース】

・相続人廃除の審判を受けた
・婚姻、縁組、認知が無効となった

 

B.詐欺や脅迫によって遺産分割が行われた場合

次に、詐欺や脅迫によって遺産分割が行われた場合ですが、遺産分割協議は相続人が自分の意思で行う必要があるので、他の人からの脅迫や詐欺によって署名押印等をした場合は無効(もしくは取り消しの対象)となりますよ。

これらの場合は、遺産分割協議自体が最初から成立していなかったものとして、やり直しをすることになりますよ。

C.遺産分割後に新たな財産が見つかった場合

×を出す男性

最後に、遺産分割後に新たな財産が見つかった場合です。

「そんなことあるの?」と思うかもしれませんが、これが意外にもよくあります。

そもそもが自分の財産では無いですからね。ある日、意外なところから通帳や現金が出てくることもありますよ。

遺産分割協議では対象となる財産を誰が取得するかについて話し合うので、協議書に記載されていない財産が後々見つかった場合には再度遺産分割協議をすることになります。

ただし、この場合は無効としてやり直すのではなく追加で遺産分割協議をすることになりますよ。

 
なお、一般的には追加の遺産分割協議をしなくて済むように、遺産分割協議書に以下のいずれかのような記載をしておきます。

本協議書に記載なき遺産や、後日、新たな遺産が見つかった場合は・・・
「相続人○○が相続する」
「法定相続分に従って相続する」
「全ての相続人が均等に相続する」 etc
新たに見つかった財産が高価なものだった場合は、特定の相続人が取得するように定めていると揉める可能性があるので要注意ですね。
参考:新たに見つかった財産が相続財産全体の中で重要性が高いものだった場合、最初の遺産分割自体が無効となり、やり直さなければならなくなるケースもあります。(東京地判平27・4・22)。

②遺産分割協議は有効だが、相続人全員の合意があるケース

全員の合意

例えば、遺産分割のやり直しを考える場合として以下のような場合が考えられるでしょう。
 

やり直しを考える事例①

配偶者と長男が相続人のケースで、今後の生活の糧にすることもあって貸駐車場として使っている土地を配偶者が相続する旨の遺産分割協議を行った。

しかし、後に長男の事業が失敗し生活資金に困ってしまった。

そこで、遺産分割協議をやり直して貸駐車場の持ち分を半分長男が相続するようにしたい。

 

やり直しを考える事例②

長男と長女が相続人のケースで、長男が今後農業をするという前提で農地を相続する遺産分割協議をした。

しかし、分割協議が成立してからまもなく長男が交通事故に遭い、今後農業をする見通しがつかなくなってしまった。

やはり遺産分割協議をやり直して、長女が農地を相続するようにしたい。

 
こういった状況になった場合に、遺産相続をやり直すことは出来るのでしょうか?
過去に一度全員が納得の上で遺産分割をしているので、やり直しできるのか気になりますよね。

この点、遺産分割協議のやり直しは可能です。ただし後述する課税上の問題に注意が必要)。

財産調査のイメージ

遺産分割については、民法第907条1項で以下の通り定められています。

第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。

このように、遺産分割のやり直しを禁止する法律は特にないため、やり直し自体は特に問題ありません。

ただし、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、やり直しをする際にも全員の合意が必要となります。

この点に関しては、最高裁判所の判例も出ていますよ(最判平成2年9月27日)

共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではなく、(~以下省略)

つまり、遺産分割協議が一度成立すると、一部の相続人が「やっぱりやり直そう!」といってもダメだけど、相続人全員がOKを出せばやり直すことが出来るということですね。

遺産分割協議のやり直しは相続人全員で「合意解除」をした上でやり直すことになります。既に成立した遺産分割協議を「変更する」ということではありません。

相続人全員の合意があってもやり直しができないケース

×を出す女性

相続人全員の合意があれば、一度成立した遺産分割協議をやり直すことができると書きましたが、例外があります。

それは、当初遺産分割の際にうまくまとまらず、家庭裁判所を通じて調停または審判による遺産分割が行われたケースです。

この場合は、家庭裁判所による調停・審判によって遺産分割が有効に成立しているので、たとえ相続人全員の合意があったとしても特別な事情がない限りはやり直しをすることができません。

ただし、何らかの理由によって相続人以外の者が参加したり相続人全員が参加せずに成立した遺産分割の場合は、例外的に遺産分割のやり直しが出来ることもあります。

審判内容に不満のある場合は、即時抗告という手続きがあります。ただし、申立には時間の制限があり、また、最初から遺産分割をやり直せるという訳ではないです。

遺産分割協議のやり直しの期限は?⇒特に無いが注意すべきことはある

やり直しの期限

遺産相続のやり直しは例外的にですが出来るということが分かりました。

では、遺産相続のやり直しをするのに期限はあるのでしょうか?

この点、遺産分割協議のやり直しに関して、法律上の期限や時効といったものはありません。要は、いつやり直してもOKという事です。

ただし、現実的に最初の遺産分割から何年も経ったあとで遺産分割のやり直しをするのはなかなか難しいです。

なぜなら、当初の遺産がそっくりそのまま残っている訳では無いからです。

特に現金は減ってしまっている事も多いでしょう。また、不動産などを遺産分割協議が終わったあとで売却してしまっているケースなどでは、もはやどうしようもありません。

財産構成が変わると、当初の財産配分と比較してどう配分するのが合理的なのか?を再度考える必要があります。

遺産分割協議のやり直しに期限がないとしても、やり直すのであれば極力早い段階で手続きをした方が良いでしょう。

【注意】遺産分割協議をやり直す場合は贈与税・所得税が余分にかかる可能性があることに注意。

やり直しでかかる税金

ここまで見てきたように、遺産分割は相続人全員の同意がある場合はやり直しをすることができます。しかし、遺産分割のやり直しをやる場合は税金に注意が必要です。

なぜなら、基本的に税務上は遺産分割のやり直しという概念がないからです。従って、遺産分割を改めてしたとしても、各相続人間での財産の譲渡や贈与、交換があったものとして所得税や贈与税の課税をされることになります。

遺産分割やり直しの課税関係

この点について、明確な法律上の規定がある訳ではないのですが、相続税法基本通達19の2-8但し書きでは以下のように記載されています。

ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。

それに、平成12年1月26日東京高裁判決(税務訴訟資料第246号205頁)では、

再度の分割協議が当初の分割協議によって帰属が確定した財産の移転を分割協議の名の下に移転するものと認められる場合には、その合意に基づく財産権の移転の効力を肯定することができるとしても、その原因を相続によるものということはできないというべきである。

としています。

分かりやすくまとめると、「遺産相続をやり直した場合は、当初の遺産分割とは性質が違います。たとえ遺産分割協議という名前で書類をつくったとしても、課税上は相続とは取り扱わないですよ。」ということですね。

特に贈与税は税率が高いので、思わぬ高額な税金が発生してしまう可能性もあるので要注意です。遺産分割のやり直しをしようと考えている場合は、税理士に一度相談した方がいいでしょう。

参考:あくまでも有効な遺産分割をやり直す場合の話です。そもそも遺産分割協議自体が無効の場合は、改めて行った遺産分割協議が当初の遺産分割として扱われますよ。すでに相続税の申告が終わっているのであれば、修正申告や更正の請求で対処することになります。

なお、遺産分割のやり直しの対象となる財産の中に不動産があった場合は登記もやり直しになり、不動産取得税登録免許税が発生するので忘れずに!

相続税申告が不要&不動産がないようなケースだと、そもそも税務署が把握していないこともあるので課税される可能性は低いかもしれないですね。一方で、相続税の申告をしていたり不動産の登記が絡む場合は、税務署が内容を把握しているので、税務署から連絡がくるケースが高いでしょう。

最後に

遺産分割のやり直しについて見てきました。

基本的に、有効な遺産分割協議が行われた場合はやり直しができないですが、相続人全員の合意があれば最初からやり直すことは可能です。

ただし、遺産分割のやり直しは手間がかかりますし税金の問題もあります。可能な限りやり直しをしなくて済むように、十分に話し合った上で協議をするようにしましょうね。

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