山林の相続税評価額の算定方法。相続する際はその後の負担にも注目。

投稿日
2019年11月03日
更新日
2019年11月04日
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山林の相続税評価額

「使い道のなさそうな山林があるけど、相続しても問題ない?」
「山林って相続税の評価はどれくらいになるの?」

こんにちは、相続税を専門に取り扱っている税理士法人ファンウォール、税理士の山中です。

ご実家の相続をするにあたって、相続財産の中に山林が含まれているケースがあります。

「そんな山林なんて持ってたの?知らなかった・・・。でも、山林なんて大した価値もなさそうだし、別に誰が相続しても問題ないだろう。」

と簡単に考えてはいけませんよ!

確かに、都心部の山林でなければ、基本的に土地としての価値はそれほど高くないでしょう。しかし、相続税に限らず山林を相続するといろいろ面倒なことが起こり得るのです。

そこで、ここでは山林を相続した場合の相続税評価の方法や、山林を相続するとどんなことが起きるのかについて、相続税専門の税理士である私が分かりやすく解説していこうと思います。

ポイントは以下の通りです。

  • 山林は「純山林・市街地山林・中間山林」に分かれる
  • 純山林と中間山林は倍率方式で評価!
  • 市街地山林は比準方式か倍率方式で評価!
  • 山林を相続すると後々の管理などが面倒!?

では、一緒に見ていきましょう。

【計算例あり】山林の相続税評価方法

税金と電卓

山林と一言でいっても、相続税の評価をする際には、所在場所の環境によって以下の3種類に分かれます。

  • ①純山林
  • ②市街地山林
  • ③中間山林

純山林は、市街地から遠く離れた場所にある山林で、相続税の評価をする際に周りの宅地の影響をほとんど受けません。

一方で、市街地山林はその名の通り市街地にある山林なので、相続税評価の際に周りの宅地の影響を受けます。

中間山林は、純山林と市街地山林の中間ですね。

相続した山林がどれに該当するのかについては、相続税評価の際に使用する倍率表を見れば分かりますよ。

例えば、以下の倍率表を見てください。

倍率表

山林の欄に「純」と書いていますね。従って、この地域の山林は純山林であることが分かります。

倍率表では、純山林は「純」、市街地山林は「比準」、中間山林は「中」と表示されています。

では、それぞれの相続税評価の方法について見ていきましょう。

参考:山林に生えている木によっては、別途「立木」の相続税評価が必要となるケースもあります(参照元:財産評価基本通達117 森林の主要樹種以外の立木の評価|国税庁

純山林・中間山林の相続税評価方法

純山林と中間山林の相続税評価はとても簡単で、倍率方式によって計算をします(参照元:山林及び山林の上に存する権利|国税庁

純山林・中間山林の相続税評価方法

相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率方式は、山林の固定資産税評価額に国税庁が定めている倍率を掛けた金額を相続税評価額にする、というものです。

上で載せた倍率表にある東京都の青梅市にある山林(固定資産税評価額50万円)を例に、考えてみましょう。

倍率表

倍率表には「純13倍」と書いているので固定資産税評価額を13倍します。

従って、山林の評価額は「50万円×13=650万円」です。簡単ですね。

市街地山林の相続税評価方法

市街地山林の相続税評価は、原則として宅地比準方式と呼ばれる方法で算出します。

以下のように国税庁の倍率表で「比準」と書かれている場合に宅地比準方式を使いますよ。

山林の宅地比準方式の倍率表

宅地比準方式は、その山林を宅地であるとみなして評価した場合の1㎡当たりの金額から、山林を宅地に転用する場合に必要となる1㎡当たりの造成費用を控除した金額に、山林の地積を掛けて計算する方法です。

言葉だけだと分かりづらいので、計算式で見てみましょう。

市街地山林の相続税評価方法(宅地比準方式)

相続税評価額=(その山林を宅地とみなした場合の1㎡あたりの評価額-1㎡あたりの宅地造成費用)×地積

例えば、市街地山林を宅地とみなした場合の1㎡当たりの評価額が5万円、宅地造成費用が1㎡当たり2万円、山林の地積が200㎡だったとしましょう。

この場合、比準方式によって計算した市街地山林の評価額は「(5万円-2万円)×200㎡=600万円」となります。

宅地造成費用については、国税庁の路線価図・評価倍率表のサイトで都道府県別に記載されていますよ。(参考:令和元年分の東京都の宅地造成日の金額)。

なお、市街地山林でも国税庁が倍率を定めている地域の場合は、比準方式ではなく倍率方式で相続税評価を行います。

また、以下のような事項に該当する場合は、比準方式を使うように指定されていたとしても、近隣の純山林の評価額を参考にして評価することになりますよ。

・傾斜が急すぎて(一般的には30度以上の傾斜)宅地転用が見込めない市街地山林
・宅地造成費用が高額すぎて比準方式の評価額より倍率方式の評価額の方が高くなる場合

特定計画山林は評価減の特例あり!

山林のイメージ

相続(又は遺贈)によって特定計画山林を取得した場合、一定の要件を満たしていれば評価額を5%減額することが出来ますよ租税特別措置法第69条の5

なお、特定計画山林は、被相続人が相続開始前に市町村長等の認定を受けていた森林経営計画が定められている区域内にある山林をいいます。

森林経営計画は、森林の所有者や経営の委託を受けた人が、自分の経営する森林の施業や保護に関する5カ年計画のことを言います。計画的な経営を行い、森林の多様な機能を発揮するために用意された制度です(参照元:森林所有者又は森林の経営の委託を受けた者がたてる「森林経営計画」:林野庁
:この特例を受ける場合もしくは受けようとする場合は、山林についての相続税の納税猶予制度を使うことは出来ません。

山林は相続税の納税猶予を受けられる!

農地を相続した人と同様に、山林を相続した人にも納税猶予の制度が用意されています租税特別措置法第70条の6の6

納税猶予を受ければ、山林の課税価格の80%に対応する相続税額について納税が猶予されますし、後継者が亡くなった場合は猶予税額が全額免除されるので、ぜひ利用したいところですね。

豚の貯金箱と税金

ただし、山林を相続すれば誰でも納税猶予を受けられるという訳ではなく、以下のような要件を満たす必要があります(参照元:No.4149 山林を相続した場合の納税猶予の特例|国税庁

まず、被相続人は相続開始直前に特定森林経営計画が定められている区域内にある山林で、作業路網の整備をする部分が100ha以上ある山林を持っていることや、特定森林経営計画に従って経営を適正かつ確実に行ってきたものとして、農林水産大臣の確認を受けたことなどが必要です。

次に、相続人は「林業経営相続人」であることが必要です。

林業経営相続人とは、相続開始直前に被相続人の推定相続人で認定計画区域内にある山林を一括で取得することについて、農林水産大臣の確認を受けた後継者のことをいいます。

つまり、「納税猶予を受けたいのであれば生前のうちに手続きをしておきなさい」、ということですね。その上で、相続税の申告時に市町村長や農林水産大臣の証明書、森林経営計画の写しなどの必要書類を添付すればOK。

納税猶予の適用を受けるには、納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供する必要があります。

一度納税猶予を受けると、最初の10年間は毎年、その後は3年に1度ずつ継続届出書を税務署に提出しなければなりません。納税を猶予してもらっているので、「きちんと山林の経営をしていますよ」、ということを税務署に証明しないといけないのです。

参考:期限までに届出書を提出しなかったり、森林経営計画が取り消されて条件を満たさなくなった場合は、納税猶予も取り消されるので要注意。

なお、山林を相続した林業経営相続人が死亡した場合は、死亡後6ヶ月以内に税務署へ免除届出書を提出することで、猶予されていた相続税額は全額免除されることになります。

【けっこう大変!】山林を相続するとどうなる?

被相続人(=亡くなった人)が林業を営んでいて、相続人もそれを継ぐようなケースではそれほど問題になることはないでしょうが、

山林の相続というと、大半の場合は「親が山林を持っていたなんて知らなかった!」というケースでしょう。

山林は普通の宅地の相続とは異なり、いろいろと面倒なことが起こる可能性があります。

以下では、山林を相続した場合にどういうことが起きるのかについて、紹介していきますね。

そもそも山林がどこにあるのか分からない!?

山林を探す

相続財産に土地があった場合、「あぁこの土地ね」と大体の場所は相続人が知っていることが多いですし、知らなかったとしても地番などを調べればすぐに分かります。

しかし、山林だとそう簡単にはいきません。地方に行くと、地図に詳細な山林の場所が載っていないことがあるのです!

「そんなことありえるの?」と思うかもしれませんが、実際にあります。

市区町村役場の担当者に聞いても、「詳しくはわかりません」と言われてしまうケースがあるのです。

被相続人が生きている間に山林の話を聞いていれば、まだ分かったかもしれないですが、亡くなった後だともう正確な場所は分からないかもしれませんよ・・・。

隣接している所有者との境界問題が生じる?

秋の山林

相続財産に山林があり、だいたいの場所がわかったとしましょう。しかし、それでも完全に安心することは出来ません。

なぜなら、登記簿や地図、公図を見るだけでは、どこからどこまでが相続財産の山林なのかが分からないからです。山林には、市街地と違って目印がないですからね。

相続したあとで、植林したり道を作ったりすると、「実は隣の土地所有者の山林だった」というケースもあるようです。

境界がわからない場合は、土地家屋調査士に測量などをしてもらうことも考えられますが、結構な費用がかかります。

山林の管理が面倒!

山林の場所がきちんとわかり無事に相続出来たとしましょう。しかし、問題はまだあります。

山林は放って置くと土砂崩れが起きるかもしれないですし、ゴミを不法投棄されるかもしれません。誰か知らない人が危険物を放置してそれが原因で誰かが怪我をしたりすると、責任問題にも発展します。

自宅のすぐそこにある山林ならまだ管理出来るかもしれないですが、遠方の山林の場合は自分で管理し続けるのは大変でしょうね・・・。

90日以内に市町村への届出が必要!

役所に届け出をする男性

宅地などを相続した場合、相続登記(名義変更)をすればそれで済みますが、平成24年4月1日以降に山林に相続した場合は、相続が発生してから90日以内に市区町村役場に届出をしなければなりません森林法第10条の7の2第1項、森林法施行規則第7条)

これは、森林の所有者に対して行政側が整備等に関する助言をしたり、間伐等をする際の整備の効率化のために、土地の所有者を把握すべくスタートした制度です(対象は、都道府県の地域森林計画の対象となっている森林)。

この届出を怠ると、10万円以下の過料が科せられてしまうので注意が必要です。

期限までに遺産分割が終わっていない場合は、法定相続分で共有しているものとして届出が必要です。

固定資産税がかかる!

税金用のお金

不動産を持っていると毎年固定資産税が課税されます。山林も例外ではありません。

従って、他の不動産と同様に「課税標準額×1.4%」によって固定資産税額が計算されて課税されることになりますよ。

将来高く売れたり、現に使っている山林なのであれば持ち続けて固定資産税を負担するのも良いでしょうが、要らない山林なのに固定資産税をずっと負担し続けるのは辛いですね・・・。

とは言っても、山林の固定資産税評価額は1坪数十円程度と言われています。

固定資産税評価額が30万円以下であれば山林に対して固定資産税が課税されることは無いので、実際に固定資産税が課税される山林はそれほど多くはないでしょう地方税法第351条

また、課税されたとしてもそれほど負担にならない金額であることが多いでしょうね。従って、固定資産税の対象ではありますが、それほど心配する必要はありません。

相続登記をしたら固定資産税がかかると思っている人もいるようですが、これは誤解です。名義変更をしてなくても固定資産税はかかりますよ。後々面倒なことにならないために、相続登記はした方がいいでしょう。

売ろうと思ってもすぐに売れるとは限らない!?

「相続した土地でいらないものがあれば、売ればいい!」

確かにその通りですが、土地を売りたいと思っても必ず売れるとは限りません。

都心部にあるような便利な土地であれば、買い手はすぐに見つかるでしょうが、田舎の山林ともなると話は別です。

杉など売ることの出来る木がたくさん生えているのであれば、製紙業の会社などが買い取ってくれるでしょうが、そうでない限りはなかなか買い手を探すのは難しいでしょうね。

隣接した土地の所有者がゴルフ場の建設計画をしているとかであれば、買い手は見つかるでしょうけどね・・・。ちなみに、市区町村役場に相談をすれば、運が良ければ買い取ってくれるかもしれないですよ。

軽い気持ちで相続したものの、そのままずっと売ることが出来ずに放置するといったケースはよくあるので、よく考えて相続をしたいですね。

【補足】要らない山林なら相続放棄をすればいい!?ただし、注意点あり

相続放棄

上で見てきたように、もともと山林を事業で使っているのでなければ、相続すると面倒なケースが多いです。

そこで、「相続放棄をすればいいのでは!?」と考える人もいるでしょう。

確かに、相続放棄をすれば要らない山林を相続せずに済みます。

しかし、相続放棄をすると最初から相続人ではなかったものとして扱われるので民法第939条、山林だけでなく他の財産も取得出来なくなってしまいます。

他にめぼしい財産がなくて、使い道もなく売ることも出来なさそうな山林だけなのであれば相続放棄をするのもいいでしょうが、他にも財産がある場合は要注意ですね。

相続放棄をする場合は、相続発生後3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。期限を過ぎると相続放棄が出来なくなってしまうので、忘れずに!

まとめ

相続財産に山林があった場合の相続税評価方法や、山林を相続することで何が起きるかなどについて見てきました。

純山林と中間山林については、倍率方式なので評価は簡単ですね。一方で、市街地山林については宅地と同じように評価して、造成費用を引くことになるので若干複雑です。

価値がほとんどないだろうからといって、相続税の申告から省いてしまうのはもちろん駄目ですよ、正しい評価をして申告をするようにしましょうね。

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